無自覚な独占欲スティーブが転校してきてから数ヶ月後、
ある昼休み、校庭のベンチでバッキーは女子たちに囲まれていた。
「ねぇバッキー、最近キャップとばっかじゃん。私たちとも遊ぼうよー!」
「そうそう、付き合い悪いぞー!」
キャップ――スティーブのことを、クラスではそう呼んでいる。
生徒会の手伝いに加え、真面目で優しいその姿勢から、いつの間にかあだ名が定着していた。
「悪い悪い。埋め合わせはするって」
バッキーは軽く受け流していたが、次のひと言に、体が反応した。
「じゃあさ、今度のホームパーティー、キャップも一緒に連れてきてよ。彼、あんまりプライベート話さないし、遊んでみたくなっちゃった」
「えー、私も! !キャップって結構タイプかも〜!」
その瞬間――
「いや、ダメだ」
バッキーの口から即答が飛び出した。
女子たちが一斉に驚いた顔を向ける。
「えー、なんでダメなの?」
「……そ、それはだな……」
自分でもなぜそう言ったのか、分からなかった。
ただ、想像しただけで、何かがザワついた。スティーブが誰かの隣で笑っている姿が。
「……なんか、アイツこういうの苦手そうだし」
そこにタイミングよく、スティーブがやってくる。
「何の話?」
「キャップ〜〜!今度のパーティー来ない? バッキーも一緒に!」
女子たちが満面の笑みで誘うと、スティーブは一拍置いて、微笑んで答えた。
「うん、いいよ」
「やったー!」
バッキーはその返答に、少し驚く。
なんだ、行くんだ……と小さく胸をしめつけられる感覚。
「バッキーも行くんだろ?」とスティーブが言うと、バッキーは軽く笑って答えた。
「……ああ。お前が行くなら、付き合ってやるよ」
(なんだそれ。俺、何言ってんだ?)
バッキーは、自分でも気づかぬうちに、
スティーブ・ロジャースという存在を――
少しずつ、手放せなくなっていた。