石乙散文 乙骨はまだ10代のガキだが、何処となく言動に色気があるし、細い下半身にフィットした服は誘ってんのか?レベルだ。そんなんじゃ、不埒な輩に狙われたり相手をしてたこともあるんじゃねぇかと思って、そういう経験も豊富なんだろうなと勝手に思っていた。その身体に既に手垢が付いているのは癪だが、経験があるならあるでスムーズにそういう行為に及べるだろうと思っていた。だから、風呂上がりにラフな格好でベッドの隣に座った乙骨の身体に触れながら、覆い被さったその時。
「えっと……なんですか?」
ものすごい純粋な目でそう問いかけてくるものだから、自分の方が戸惑ってしまった。
「……なにって、そりゃ、オマエ…」
「僕の腰になんかついてます?」
更にはそう言って、乙骨の腰から服の内側に這わせようとしていた石流の手をまじまじと見ていた。
いやこれわざとか?と思いつつ、そのまま手を乙骨の身体に這わせれば、乙骨が「あひゃあっ」と色気も何もあったものじゃない声をあげた。
「ちょっと、くすぐったいですよ!」
「いや、んー、まぁ」
確かに脇腹を触られたらくすぐったいと思うが、自分の狙いはそこではなくて。
一思いに乙骨が着ているシャツをめくってしまえば、乙骨が再び「ふへ!?」と変な声をあげた。
「え、なんで脱がせるんですか?止めて下さいよ、風邪引きます」
「……」
「石流さん?聞いてます?」
石流にめくられたシャツを戻そうとしながらそう言ってくる乙骨に、石流は眉を寄せつつ、乙骨から手を離した。
「なぁ……」
「はい?」
「オマエ、俺が何をしようとしてたか、分かってねぇのか?」
石流のその問いに、乙骨が目をパチクリとさせている。
「えっと……僕のシャツを脱がそうとしてました?」
「いや……脱がして何をしようとしていたかだよ」
言いながら、乙骨にぐっと顔を近づける。距離はほんの数センチ。もう少し近づけたらキスだってしてしまいそうな距離でそう言うが、乙骨はやはり瞬きを返してくるだけだった。
「え……なんか着替えさせようとしてました…?」
そしてあっさりそんなことを言ってくるものだから、思わずがっくり肩を落としてしまった。
(マジかよ、こいつ……)
こんな色気ムンムンな身体と格好でいるくせに、本人はまったくそんなつもりはないようだ。
ああくそと思って、石流は乙骨の背中に腕を回してその身体を抱き寄せた。
「う、わ…!」
乙骨の身体はあっさりと石流の胸に収まり、そのまま掌で乙骨の腰やら太股やら尻のあたりまで撫でた。
「ちょっ…!?どこ、触ってんですか…!?」
石流の行動に驚いたような顔でこちらを見てくる。だが、乙骨も石流が向ける視線に気付いたのか、戸惑うような顔を見せてきた。
「……いしごおり、さん…?」
「まだ、分かんねぇのかよ?」
乙骨の唇にちゅっと触れるだけのキスをしてから、石流はハッキリと言った。
「俺はオマエを抱きたいんだ」
「……はぁ」
だが、まだ乙骨の反応は芳しくない。
「抱く……なら、もうしてません?」
更にはそんなことまで言って来て「あ~~~~~~」と内心唸った。
「だっ、から…!俺は、オマエと、セックスしてぇって言ってんだよ…!!」
我慢ならずに石流がそう言えば、乙骨は目をパチクリさせ、それから。
顔がボンッと一気に真っ赤になった。
あ、これはやっと意味が通じたか?と思った。いやもう、答えをハッキリ言っちまったけど。
「せせせせせせせセックス…!?ですか…!?」
乙骨が顔を真っ赤にさせて、口を魚みたいにパクパクさせていた。なんだこいつかわいいな。
「……そうだよ」
「いいいやでも、僕おとこですよ…!?」
「んーなの分かってんだよ」
今更なに言ってんだと思いつつそう返して、乙骨に再び顔を寄せた。
「性別なんて関係ねぇ……オマエとセックスしたい──抱きてぇんだよ」
息も掛かるくらい近くでそう言ってやれば、乙骨は顔を真っ赤にしたまま目を見開いた。だが、すぐに首をぶるぶると左右に振った。
「む、むりですよ、そんな…!」
「……ダメなのかよ?」
「だめ、とかじゃ、なくって……」
言いながら顔を腕で覆って見えなくしてしまった。でも、耳が真っ赤なのはよく分かった。
「むり、ですよ……そんな、急に、せっくす、なんて……」
そのままそんな風に言うものだから、思わず溜め息を吐いた。
(もっと、こういうことに慣れてて、すぐに抱けると思ったんだがな……)
想定以上に初すぎて、これはセックスまで漕ぎ着けられるか分かんねぇなと、げっそり思った。