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    さなか

    @o_sanaka

    成人腐(↑20)。主に石乙で文字と絵を投稿してます。

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    さなか

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    石流ぬいと乙骨くんの話(石乙)

    #石乙
    stoneB

    石乙散文「憂太、これあげる」
     僕の顔を見るなり、五条先生がひとつのぬいぐるみをポスンと渡してきた、それは。
    「……何ですかこれ」
    「ん?ぬいぐるみ」
    「いや、それは分かるんですけど……誰かに似てません?」
     サイズは30センチくらいで抱えるくらいの大きさだ。そして頭身を二頭身でデフォルメされているが、素肌に白のファーが付いた黒いジャケットを着ていたり、頭頂部からにゅっと伸びてる髪といい、目元にちょんちょんと付いた睫毛といい。
     その特徴は明らかに、石流さんを模していると思った。
     それに気付いているのかいないのか五条先生は「さぁ~~誰だろうね」なんて笑って言ってくる。
    「これはちょっとした呪骸のテストなんだ」
    「呪骸の?つまりこれはただのぬいぐるみではないってことですか?」
    「まぁ作りはただのぬいぐるみだよ、ちょっと特別製だけどね」
     そう言って五条先生がサングラスの向こうでウインクしてみせる。
    「憂太がよかったら、しばらくそれを預かっていて欲しいんだけど」
    「はぁまぁ……いいですけど」
     とりあえず頷きつつ、改めて五条先生を見た。
    「ちなみに次の任務は?」
    「まだ僕らが呼ばれるようなものは来てないよ。昨日も大変だったんだし、もう少し寮で休んでなよ」
    「そうですか…」
     そう答えてから、五条先生に頭を下げて寮に戻った。途中でスマホを確認したら、本物の石流さんからメッセージが来ていて、今は他の任務に行っているらしい。
     僕が寝ている間に擦れ違っちゃったのか。
     そう思ったら寂しいけれど、胸に抱いた彼を模したぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて、部屋に向かった。

     石流さんは、僕が監視を担当している受肉体だから、そうなってからはほぼ一緒に行動していた。けれど僕が単独任務に呼ばれたりすると、石流さんも他の術師の補佐として駆り出されることがあった。
     一体の受肉体ではなく、一人の呪術師として扱われている、それは喜ばしいことなんだろうけれど、今みたいに会いたいときに擦れ違ってしまうのはどうしようもなく寂しい。
    (……なに、甘えたこと考えてるんだろ…夜までにはさすがに帰って来るでしょ、そしたらまた会える。あの人が帰ってくる場所は、ここなんだから)
     制服の上着だけ脱いで、ポスリとベッドの上に身体を倒した。昨日の夜から今日の朝方に掛けて任務に出て、今日の昼頃まで寝ていた。食事はとったけれど、まだ身体には疲れが残っていた。
    (こういう時……石流さんの腕に抱き締められると、気持ちいいんだよな……安心できるっていうか、気兼ねなく休めるっていうか……)
     だからこそあの人の存在が恋しい。
     むむんと唸りながらそんなことを考えていれば、ふっと五条先生に渡された石流さんそっくりのぬいぐるみが目に入った。とりあえずベッドヘッドあたりに置いておいたのだが、見れば見るほど、あの人そっくりだ。
    (……本物とは、全然違うだろうけど…)
     僕はそのぬいぐるみを手に取り、ぎゅっと抱き締めた。そしたらちょっと落ち着いて、ホッと息を吐いた。
    (好きだなぁ……)
     その存在を恋しいと思うくらい。
     その力強い腕で抱き締められたいと思うくらい。
     むしろもっと深い場所で繋がりたいと思うくらい。

    「石流さん……大好き……」
     言いながら、ちゅっとそのぬいぐるみに口づけた。
     すると。

     ボンッと音がして周りに煙が舞った。僕が「え?え?」と思っていれば、ずしりと抱き締められるような重みがした。
     そしていつの間にか目の前には、僕が抱き締められたくてたまらなかった逞しい腕と、胸筋が見えた。
     僕が顔を上げれば、それは確かに石流さんで、石流さんは目をパチクリと瞬きをさせて、僕を見ていた。
    「おお、マジでキスで元に戻った」
    「は、ぁ…!?」
    「いや、オマエが寝ている間に行ってきた任務で、なんか変な呪詛師に人形にされる呪いを掛けられてよ」
    「はい…!?」
    「そいつはまぁ、あのサイズでも撃てたグラニテブラストで仕留めたけどよ、元に戻れなくて」
    「へぇ、え…!?」
    「あの目隠し教師が、好きな子のキスで元に戻ったりするんじゃないか~って。マジ適当なこと言うなって思ったけどよ」
     言いながら石流さんは、慌てふためく僕に屈み込んできて、そっと顎を取られた。
    「あ……」
    「マジで元に戻れるとは思わなかったぜ、ありがとうな、乙骨」
     そう言われてそのまま口づけられた。もうなんかよく分からないけど、とにかく、目の前に本物の石流さんが現れて、恋しかった存在が目の前にいて、僕はそのまま、彼に抱きついた。

     その後、彼がぬいぐるみだった間の行動を振り返れて、それはとても恥ずかしかったけれど。
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