イマジナリーフレンド「百々人先輩」
聞きなれた声をかけられて、百々人は愕然とした。
そこは百々人の自室。レッスンが終わって、一人で暮らすこの部屋にさきほど帰り着いたばかりだ。ダンスレッスンで疲弊した体をベッドに預けて、うとうとしていた時のことだった。
一気に眠気が飛ぶ。慌てて体を起こせば、ベッドのそばに見慣れた、しかしここにあるはずのない後輩の姿があった。
「今日のレッスンは散々でしたね」
絶句する百々人に構わず、「それ」はひとりで勝手に喋りだす。
「リズムに乗れないし、体はぶつかるし」
「……。」
次に来るだろう言葉に想像がついて、百々人はぐっと拳を握りしめた。
「先輩、才能ないですよ」
俺と違って、と言外に含ませながら、「それ」は秀の顔をして百々人をあざけった。
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