事務所総出の運動会、後半戦。俺は主な出番が前半戦だったから、正直、応援席でかなり気を抜いていた、と思う。同じユニットの先輩たちとはチームが違ったし、借り人競争で自分が呼ばれることもまずないだろうとたかをくくっていたのもあった。
競技場から応援席の扉を開けて飛び込んできた百々人先輩に、先輩と同じ、黄色のチームカラーのジャージを着た人たちがそわそわと腰を浮かせるのが見えた。
でも、百々人先輩の視線はその人たちの頭の上を素通りして、赤いチームカラーのジャージの集団を誰かを探すようにぐるり、と見回した。誰を探してるのかなんて、聞かないでもわかる。……ついさっき鳴ったお父さんからの激励の電話を、律儀に席を外して受けに行ったうちのユニット最年長の先輩のことだろう。
1774