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    途綺*

    @7i7_u

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    途綺*

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    🔮🐑//君の愛に溺れる

    静かに追い詰められている話。彼は一体何をやらかしたんでしょうね?

    #PsyBorg

    ファルガーがソファに座っていると、手に持っているのが本でもスマホでも構わず浮奇はいつも膝に乗りたがる。時に正面だったり後ろ向きだったり気分によって変わるそれは、猫が自分の心を許した存在に寄り添うのと良く似ていて、少し擽ったい愛おしさに心を解されるようなファルガーの好きな瞬間だった。サイボーグであるため浮奇の体重が何の問題にもならないことを伝えてからは遠慮なく距離を詰めてくるようになったことだって、ファルガーにとってこの上なく嬉しいことだった。

    だが長所と短所は紙一重とはよく言うもので、ファルガーは嬉しそうな顔で近づいてきた十数分前の浮奇を膝に乗せたことを酷く後悔していた。

    「ふーふーちゃん、聞いてる?」
    「聞いてるさ、ちゃんと。」

    作業がひと段落したのか嬉しそうな声で名前を呼びながらやってきてソファに膝をついた浮奇を、今日は正面の気分かなんて考えながら普段の癖で腰へ手をやりながら膝の上へと乗せて。最近少し柔らかさを増したその身体を抱きしめようと殿部へ手を回して引き寄せようとしたのを、胸に手を付くことで制されたため不思議に思って浮奇の顔を見れば、自身の想像が見当違いであることに気付かされた。

    「これは猫カフェの時の。猫におやつあげてるふーふーちゃん、すごい真剣で可愛いでしょ?」
    「あぁ。」
    「あと、これ!ドッゴも一緒にピクニックに行った時の。見て、ふーふーちゃんが俺の作ったサンドイッチ食べてるとこ。これ動画もあるよ。」
    「よく撮ってたな。」
    「見て見て。ふーふーちゃんってば、ひと口が小さいからソースが付いちゃってるの。小さい子みたいで可愛いよね。」
    「あぁ…」

    どうやらファルガーとくっつきに来たわけではないらしい浮奇は、困惑するファルガーに綺麗な笑みを向けるなり手に持っていたスマホでファルガーの写真やら動画やらをひたすらに見せてきた。意図を上手く掴めないままでかれこれ十数分は自分の写真を見せられているファルガーは、さすがに居た堪れない気持ちに襲われた。

    「これはね、海に行った時の。ドッゴと砂浜を歩いてるふーふーちゃん。ドッゴと同じくらいはしゃいじゃって可愛いかったなぁ。」
    「あー、浮奇?」
    「なぁに?ふーふーちゃん。」
    「楽しそうなのは喜ばしいんだが、自分の顔ばかり見せられるのは居た堪れないというか…俺が俺自身を好きじゃないのは知ってるだろう?」
    「うん、知ってるよ。」
    「浮奇と一緒の写真もあるんだから、俺だけの写真ばかり見せなくても。」
    「それじゃ意味ないでしょ。」
    「意味?」

    混乱した頭ではやはり上手く汲み取れず浮奇の言葉を無意識に繰り返してしまえば、また浮奇が可愛いと小さく溢した。何度も繰り返されると暗示のように徐々に受け入れてしまいたくなってくるのだから、人間の脳は恐ろしい。

    「今日はね、ふーふーちゃんを可愛がる日なの。」
    「…どうして。」
    「俺の気分だよ。見て、俺が選んで買ったランジェリー着てるやつ。」
    「なっ、浮奇!」
    「フリルもリボンもいっぱいで可愛かったよね。ふーふーちゃんは何を着ても可愛いけど。ほら、後ろ姿とか最高に可愛い。」
    「ストップ!」

    追い打ちのようにいつかの夜に盛り上がって撮った写真を見せられては、さすがに逃げ出したくなった。だが正面から抱きつかれるように膝に座られているせいで、浮奇を振り落とす選択肢がファルガーの中にない以上は物理的にその場から逃げることが叶わず、ファルガーはぎゅっと目を瞑って顔を逸らした。

    「ダメだよ、ふーふーちゃん。ちゃんと見て。」

    しかしファルガーの悲痛な叫びは浮奇に届かず、顎を掴まれ浮奇の方を向かされる。閉じた瞼越しでも熱い視線を感じて、ファルガーはますます強く目を閉じた。自分のしていることが些細な抵抗だと分かっているが浮奇が小さく鼻で笑う声が聞こえて、言われてもないのに可愛いと言われたような感覚に陥る。

    「やだ…なんでそんなに意地悪なんだ。」
    「ふーふーちゃんは、痛いのも苦しいのもご褒美になっちゃうでしょ。」
    「…は?」

    予想もしていなかった発言に思わず目を開く。

    「あ、やっと見てくれた。」

    浮奇の言葉にそれさえも彼の手中なのだと気づいたがもう手遅れで、色違いの星を宿す瞳に捕まってしまえば逃げ道などなかった。

    「お仕置きだよ、ふーふーちゃん。今日は、ふーふーちゃんが自分を可愛いって認めるまで可愛いがるから。」

    手を離した浮奇は次の写真を見つけるためにスマホへと視線を戻す。じんわりと体温を上げていくようにゆっくりと焼かれるような熱を移してくる視線が途切れたことに寂しさを感じて、自分の感情に気付いたファルガーは天を仰いだ。自分自身を好きになれそうにはないけれど浮奇から渡される言葉に不思議と嫌悪感はなくて、どうしようもなく囚われているのだと認めざるを得ない。

    神妙な面持ちで物思いに耽るファルガーに気付いた浮奇は、スマホから視線だけを上げてそっと微笑んだ。

    「ほんとに、ふーふーちゃん可愛い。」


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    途綺*

    DONE🔮🐑//貴方を護る星空の祈り

    少し疲れて夢見が悪くなった🐑の話。「君の知らない真夜中の攻防(https://poipiku.com/6922981/8317869.html)」の対になるイメージで書きましたが、未読でも単体で読めます。
    人間にはそれぞれ活動するのに適した時間帯があるのだと、ファルガーが教えてくれたのはいつのことだっただろう。朝が得意な人もいれば、夜の方が頭が働きやすい人もいる。だからそんなに気にすることはないと、頭を撫でてくれたのを覚えている。あぁそうだ、あれは二人で暮らし始めて一ヶ月が経った頃だった。お互いに二人で暮らすことには慣れてきたのに、全くもって彼と同じ生活リズムを送れないことを悩んでいた。今になって考えれば些細なことだと笑えるけれど、当時は酷く思い悩んで色んな人に相談して、見兼ねたファルガーが声を掛けて「心地よくいられること」をお互いに最優先に生活しようと決めたのだった。




    そんなやり取りから数ヶ月。いつも通り深夜に寝室へ向かった浮奇は、すっかり寝入っている愛おしいひとの隣へ潜り込もうとベッドへ近づいた。静かにマットレスへ膝を付いて起こしていないことを確認しようと向けた視線の先で、眉を顰めて時折呼吸を詰めるファルガーを捉える。
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