これからはじまる恋と愛。 自覚した瞬間、あ、無理だな、と失恋した。
無理だ。無理無理。
だって相手はクラさんだ。
元聖職者で元人間の吸血鬼。二百年眠っていたのに日本でも前向きに暮らしている凄い人。
しかもかっこいいし可愛い。
黙って立っていれば海外の俳優かモデルに間違えられるし、喋ればそのふんわりした雰囲気に引き込まれる。
猫カフェにクラさん目当ての客もいるぐらいだ。
そんな彼の隣に友人として立てているのが奇跡に近いのだ。
だから無理。
うん無理。恋の土俵に立てるはずもない。敵前逃亡、戦略的撤退だ。
だが、なんというか、恋を自覚して失恋したが、友人として接していればカッコいいなぁだとか、髪に触れたいなぁだとか、抱きしめたいし抱きしめて欲しいなぁという欲が蓄積されていく。
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