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    michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    anzr 初出2023.4.
    斗メイ
    居眠りするメイを見て、一思案する山神さんの真意。

    我が事務所が誇る唯一のエトワールはいま、事務所の自席でうつらうつらと安らかな寝息を立てている最中だ。

    #斗メイ
    #anzr男女CP
    anzrMaleAndFemaleCp

    手遅れと知りつつ(斗メイ) 彼女を置き去りにしたくないと、魂の底からの叫びが聞こえた。しかし本来ならば、柳顔を伏したメイくんに気がつかないふりをすることが正だとも思っている。我が事務所が誇る唯一のエトワールはいま、事務所の自席でうつらうつらと安らかな寝息を立てている最中だ。
     気の利いた紳士ならば迷いなくエトワールを抱き上げて、彼女に与えられし魂の住処へと送り届けるところだろうが――僕にとっては身に余る行為とも言えよう。おそらく彼女も望んではいまい。
     今メイくんが担う案件はまさに、全てが決着する大詰めの局面に突入している。時には一瞬の隙も許されず、神経を鋭く研ぎ澄ませ、その繊細な感性を全身全霊で注ぎ込む必要があるだろう。彼女の全てが、成功か失敗かという命運の分かれ道にかかっている。その道を容易く奪おうとは野暮というものだ。
     しかしながら、翼を休める戦士の束の間の平穏を助けたい気持ちは根強く、胸の中にある。現にこの手の中には、先刻までソファから零れ落ちそうに放置されていたブランケットが握られている。

     ふうう、と長めに息をつき、そろりそろりと近づいていく。
     指の先も触れぬよう注意深くブランケットをかけようとすれば、身じろぎした彼女は僅かに肩を震わせた。無防備さはエトワールの愛らしさをより一層引き立てるに違いないが、闇の眷属たる今の僕には少々刺激が強くもある。
    「ん……」
    「っ」
     寝返りが叶わなかったその肩はなんと細く、うつくしいのだろう。窓からぼんやりと照らされた満月の光から覆い隠すべく、どうにか彼女にブランケットをかけた。
     こうして無防備に身を凍えさせる仲間を、間接的に助けることは容易いはずだ。しかしながら彼女が相手というだけでぎこちなく、指先が震える理由については。
    (……考えたら、あかんのやろなあ)
     己の身に降りかかる命題に向き合うには未だ、覚悟が足りない。赦されないと理解していながら未だ、彼女からは離れがたい。

     彼女を置き去りにしたくないと、魂の底からの叫びが止まない。湧き上がる願いに慄く臆病心は、気がつかないふりを続けている。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
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    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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