Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

    ☆quiet follow Yell with Emoji ❤ 🌓 💋 🌹
    POIPOI 229

    syako_kmt

    ☆quiet follow

    むざこく30本ノック③
    延長戦
    七夕

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    七夕 7月7日、雨。

     年に1度しか会えないのに、自分たちが会う時は毎年雨だった。
     窓ガラスを叩く雨をぼんやりと眺めながら、それは、まるで誰かの涙に思えて、愛しい彼との逢瀬を責められている気がしていた。

    「いいかげん、このシステムをなくせないものか……」
     無惨はベッドの上で唇を尖らせる。
     彼は鷲座の一等星アルタイルを守護星に持つ、彦星の転生者である。
     そして、そんな彼の腕の中で甘えているのは巌勝。彦星と対になる、琴座のベガを守護星に持つ織姫の転生者……であったら良かったのだが、彼はどの星座の守護も持たない、ただの一般人である。
     本来、無惨には妻である「織姫」がいた。二人の仲人役の白鳥座デネブの守護を受けた鵲もいたのだが、事もあろうに無惨は巌勝に一目惚れをしたのだ。
    「彼こそが私の運命の織姫だ」
     と高らかに宣言し、妻を捨て、新たな恋に走ったのだ。

     これだけなら、ありがちな略奪愛や不倫といった陳腐なラブストーリーだが、問題はそんな単純な話ではなかった。
     守護星を持つ転生者たちには、それぞれに役割がある。
     彦星こと牽牛の転生者である無惨は、前世と同じく労働を意味する役目を与えられている。現代では、この国の中枢で経済施策を講じ、経済発展を担う立場の人間であり、代々その役目を務めてきた一族である。そして妻である織姫は天帝の娘、即ち皇女である。
     転生者と認められた人間は皆、凡人より高い能力を持ち、特別な家柄に生まれている。転生者の証である赤い瞳はルビーのように美しく、初めて見た時、巌勝はその美しさに吸い込まれそうになり身動きが取れなかったと話す。
     彦星の転生者であると判明した無惨は皇女織姫の降嫁先と決められ、お互い顔も知らないうちから許嫁として育てられた。それも役目のうちだと諦め、決められた人生を生きていた時に巌勝と出会った。
     普段なら出会うことのない人間だ。
     巌勝は無惨と同じ銀行に属しているとはいえ、組織の中でもかなり下の行員にあたるので、総裁である無惨と会うことなど通常ではありえないことだったが、様々な偶然で二人は巡り合った。
     無惨は全てを捨てて巌勝と生きることを望んだが、それは許されることではなかった。
     天より授かりし能力は知能の部分だけでなく、人知では計り知れない神としての能力もこの国の土台を下支えしているのだ。
     彼を含めた転生者が己の願望ではなく、この国の安寧と人々の幸福を願う、神職としての役割も兼ねていることで、この国は豊かで平和で幸せな国として成り立っていたのだ。
     無惨が巌勝との逢瀬を重ね、己の欲望にばかり囚われるようになってから、この国の経済は一気に傾き、失業者が増え、治安悪化に繋がった。
     夫に裏切られた織姫は泣いて過ごし、天帝の怒りも買い、無惨は巌勝と会うことすら禁じられた。
     そのショックで無惨は禁忌である自死を選ぼうとしたので、天帝の情けで1年に1度だけ会うことを許された。
    「年に1度だけ会える日だ。お前が決めることを許してやろう」
    「父なる天帝よりの恩情、心より感謝致します」
     無惨は最敬礼で感謝の言葉を述べたが、選んだ日は織姫との結婚記念日である7月7日であった。
     これに対する天帝の怒りは凄まじく、二人が会う日は必ず大雨を降らせた。
     そのせいで二人は表を出歩くことなく、会えなかった時間を埋めるかのように互いの体を貪り合い、愛を深めたのだ。
     離れる時に毎回「絶対に私がこのシステムを壊してくる」と無惨は言った。
     許されない恋をしている自分が悪いと巌勝は雨に打たれながら、ずっと、この恋を悔やんでいた。
     この雨は織姫の涙だ。
     無惨が職務を放棄したことにより不幸になった人々の涙だ。
     本来、非難され殺されるはずの自分を無惨が守ってくれていることで生き永らえているが、銀行内でも立場は最悪で、無惨と恋愛関係になってから、倉庫番という実質的な左遷となった。
     しかし、これでお別れだと毎回言えなかった。
     こんな状況でも良いから無惨との関係を続けたいと願うほど愛していた。
    「また来年……この日をお待ちしております」
     巌勝は雨の中、深々と無惨の背中に頭を下げた。

     無惨の心を巌勝が奪った。
     巌勝は神を誑かした大罪人であり、無惨の心が戻らない以上、この国の経済はずっと崩れたままであった。
     安定しない経済は様々な分野へ影響を及ぼし、それぞれの分野の長が直々に無惨に苦情を言いに来るが、何を言われても無惨は改める気がないようだ。
    「更迭されることを狙っているのか?」
     天帝に呼び出され、そう問われても無惨は平然とした様子で答える。
    「織姫の夫である私を追放出来るのは天帝以外にはおりますまい。天帝の御心のままに」
     挑戦的に光る赤い目を憎々しく思ったが、ここで無惨の挑発に乗れば無惨の思い通りになってしまう。
    「思い上がるな、牽牛の分際で」
     天帝は無惨を幽閉するよう命じ、地下の牢獄で監禁状態となった。
    「もうお前は何もしなくて良い。その力だけを国の為に供給しろ」
    「馬鹿げている!」
     この国の崩壊を心から願ったが、天帝をはじめとした転生者たちの能力で封じ込められた。ならば死を、と思うが、それすらも自らの意思では願えない。
    「ここから出せ! 話が違うぞ!」
     何度もそう叫んだが、彼は天寿を全うするまで、この国の為に祈り、その力を吸い上げられる為だけに生きるのだ。こうすることでかろうじて、この国の平安は保たれるのだ。
     そして、次の7月7日がやってきたが、無惨は地下牢から出ることは許されなかった。誰もいない地下牢で叫び続けるが、天帝の恩赦は二度となかった。
    「巌勝……」
     愛しい者の名を呼び続けた。愛しい巌勝に会えないのなら、こんな世界、滅びてしまえば良いと思い続けたが、それは天帝と同じ、神特有の傲慢さであることに気付いた。
     どれだけ離れていても、たとえ会うことが出来なくても、この世界で巌勝は生きている。ならば、巌勝だけでも守らなくては……と、細々と自ら祈りを捧げるようになった。

     巌勝は待ち合わせ場所でずっと待っていたが、空に月が輝いても無惨は現れなかった。
    「どうぞ、お幸せに……」
     一般人の自分の願いなど無惨に届くはずがない。そう解っているが、愛しい人の幸せを願いたくなるような美しい天の川を見て、無惨と出会ってから初めて見る光景に二度と会えないことを悟った。

     7月7日、晴れ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭🙏🌠💘🎋👏👏👏🌠🌠❤🌠🌠❤🎋🎋🎋🎋😭😭😭👏👏🌠🌠🎋🎋🎋🔹🔹🔹🔹🌌😢🔹🔹🔹🔹😭😭😭🎋😿🎋🎋🎋🎃🎋😭😭😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック⑤
    25日目
    某映画賞の授賞式で某イケメン俳優がしていたスタイルを、無惨様がなさるお話が読みたいです。それを初めて見た黒死牟の反応も知りたいです。
    フレームレスメガネ、黒タートル、黒系ジャケット、シルバーアクセの、顔とスタイルが良くなければ絶対似合わないあれです。

    普段はスーツでしょうし、無惨様は裸眼だと思うのでどういう状況だろう…とは思いますが、絶対お似合いになると信じてい
    某映画賞の授賞式で某イケメン俳優がしていたスタイルを、無惨様がなさるお話が読みたいです。 黒死牟がテレビの画面を見ながら、思わず感嘆の声を漏らした。一体何事かと思い、ソファに寝そべってタブレットを見ていた無惨は、テレビの画面に視線を移した。
     それは某映画賞の授賞式の中継だが、優秀助演男優賞を受賞した面々がレッドカーペットを歩く姿を、じっくりと見入っているのだ。
    「美しいですねぇ……」
     どの俳優を指しているかは一目瞭然である。そう、黒死牟は超がつくほどの面食いなのだ。国宝級イケメンとの呼び声高い無惨を彼氏に持つ黒死牟が見惚れてしまうほど、その俳優は美しかった。
     黒いハイネックのセーターに黒いスーツ、そして首元に輝くシンプルなパールジュエリー。どこを取っても隙のない美しさだというのに、それより何より美しいのが顔面で、その顔面の魅力を倍増させる眼鏡の破壊力。無惨は少々不貞腐れながらも冷静に分析していた。
    1291

    related works

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
    3210

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    17日目
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション 何か理由があって髪を伸ばしているわけではない。
     長い髪って手入れが大変ですよね、と言われるが、実はそうでもない。短い髪の時は月に一度は散髪に行かないといけなかったが、長い髪は自分で毛先を揃えるくらいでも何とでもなる。女性と違って髪が傷むだの、枝毛がどうだのと気にしたことがないので、手入れもせず、濡れた髪を自然乾燥させることにも抵抗がない。それに短い髪と違って、括っておけば邪魔にならないので意外と便利だし、括っている方が夏場は涼しいのだ。
     つまり、ずぼらの集大成がこの髪型だった。
     特殊部隊に入った時、長髪であることにネチネチと嫌味を言われたこともある。諜報活動をする時に男性のロングヘアは目立ち易く、相手に特徴を覚えられやすいから不向きだと言われ、尤もだなと思ったが、上官の物言いが気に入らなかったので、小規模な隠密班を編成する際の長に選ばれた時、全員、自分と背格好が近く、長髪のメンバーだけで編成し、危なげもなくミッションを成功させたことがある。だが、自分の長髪にそこまでこだわりがあったわけではなく、単なる反発心だけである。
    2382

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    15日目
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか
    「ほら見たか!これで恐れるものなぞ何もないわ!」とかつてないほど昂るのか、「案外大したことないわ、つまらんな」と吐き捨てるのか、「太陽の方がやはりお好きで?」「白昼にも月は出ておるわ馬鹿者」みたいな気楽な会話になるのか
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか  それは初恋の憧れに似ていた。
     手の届かない遠い存在という意味か、遠い昔の燦爛とした断片的な記憶のせいか、その強い「憧れ」が根底にあるから黒死牟とは意気投合したのかもしれない。
     自分たちにとって太陽とは最も忌むべき存在であり、その反面、強く憧れ、恋い焦がれた存在であった。
     今でも朝日を見ると、今際の際を思い出し身構える。しかし、その光を浴びても肌が焼け落ちることはなく、朝が来た、と当たり前の出来事だと思い出すのだ。

    「今日も雲ひとつない晴天ですね」
     黒死牟が車のドアを開けると、その隙間から日の光が一気に差し込む。こんな時、黒死牟のサングラスが羨ましいと思うのだが、まさかサングラスをしたまま街頭に立ち、演説をするわけにはいかないので日焼け止めクリームを丹念に塗り込む程度の抵抗しか出来ない。
    2129

    recommended works