潔世一の幼馴染み。240。
俺達のいる第伍号棟では、一番に強いというしるしだ。
その数字を左腕につけて、俺に気づき、笑いかけてくる、赤嗣星来が。
その脇に見えたのは、たぶんチームメイトの奴らだと思う。白髪の大男が星来の腕を引っ張って、「星来…玲王に怒られる、」と言っているのを聞いた。
サッカーを始めたのはほぼ同時期だったし、なんなら俺がやってたから星来もつられて始めたのに、いつの間にか知らない人になったみたいな違和感を覚える。
俺は学校のサッカー部に入ってたけど、星来は中学からスカウトされて、有名なサッカークラブに入ってたから、ちゃんと顔を合わせたのは久しぶりだった。
身長も気付いたら抜かれてたし、髪は金髪に染められてたし、俺の記憶止まりの星来は大きく塗り替えられていった。
「世一、チームYに勝ったんだって。凄いな」
「今この状況で言われると嫌味みたいだな……。まぁでも、サンキュ」
「そう?他意はないけど。でもま、早く戦いたいよなぁ、俺ら」
「おぉ。ブッ潰す」
「こえぇ笑」
死物狂いで戦った。それぐらい、星来たちは強かった。誰も、伍号棟最強のVチームが、俺らZチームに負けるだなんて、思っていなかった。
凪がチートトラップで点をクソ決めてきて、玲王はチームを円滑にするパスを出すし、斬鉄はバカ速い。
でも皆がエゴを貫いて、皆が勝ちたいと思って、勝つ気で戦ったから、勝てた。
勝って放心状態なのと、試合後の疲労が重なる。
ふいに、星来を見つけた。
そういえば、とふと思って、鳥肌が体中を駆け巡る。
アイツ……、今の試合中、どこ守ってた?いや、つーか…居た、か?コートに。
だって点を決めたのは、凪と斬鉄だ。すっかり記憶からも、視界からも消えていた。
もしかして。想像が頭を支配する。
疑うような、絶望したような表情を星来に向けたからなのか、目が合った。
目を細めた星来。狐目が更に強調される。
星来の体には、唯一涼し気な雰囲気さえ漂っていた。汗が、ほとんど浮いていない。
思えば、星来がドリブルしていたボールをいくつか、俺は取ったかもしれない。マークも抜いた気がする。
だから特に、記憶に残っていなかった。
「………嘘だろ…」
――――――わざと勝たせた、のか?俺を?なんで、
「世一、元真似事のぬるいサッカーが随分成長したな。俺は嬉しいぜ。よくこいつらに勝った、エゴイスト」
「勝たせるために、わざと手ェ抜いたってことかよ……、」
そのとき、瞳に写ったのは、
皆の首に束縛の鎖が巻いてある中、ただ一人だけ、白い首筋をちらつかせながら不敵に微笑む、俺の
幼馴染みの姿だった。