最高気温は三十八度、危険な暑さとなるので熱中症に注意……。さらりと読み上げる天気予報士の声からは白々しささえ感じる。
そこらじゅうで陽炎が揺らめき、このまま街ごと溶けてなくなってしまうのではないかと思わせた。
「うぁー! あづい! あっづいな!」
「ちょっと、あんま騒がんといてくれます? 余計暑苦しいんすけど」
ある日の帰り道、隣で呻く謙也は言葉とは裏腹に元気そうに見えた。少し日焼けした肌がしっとり汗ばんでいて健康的だ。
「そう言う財前はえらい涼しそうな顔しとるやんか」
「俺やって暑いもんは暑いっすけど、言うてもしゃーないやないですか」
「すごいなお前……普通耐えられへんて」
「そない暑いんなら触ってみます?俺の体」
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