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    hirata_cya

    @hirata_cya

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    hirata_cya

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    ビマヨダ⚽パロ。ビーマ視点。ちまみれすぷらった。

    #ビマヨダ

    Hand of Glory(ビーマ視点) 目を瞠るしか、出来なかった。
     見る間に真っ赤に染まっていく芝生、よく熟した柘榴のように割れた顔よりも太い血管が通っている太腿を抑えることを優先したらしい大きな掌。けれどもそんなものでは圧迫止血の足しにもなりはしなくて、見える範囲の肌がどんどん青白くなってゆく。
     しらじらと明けかかる夜と朝の境目に似た色をした瞳を赤に埋もれる前に見て、眼球は無事なのかとこの状態にも関わらずほんの少しだけ安堵して、それから右肩に衝撃を感じた。
    「退け」
     蹌踉めいて、それでも転ぶことは免れる。光を弾く白い髪が、暁の視線を遮った。
     世界に音が戻ってくる。
     試合終了のホイッスルの余韻、応援席で狂ったように打ち振られていた青と白の旗は、仰向けに倒れたままぴくりとも動かない男の様子を見て取ったのか、徐々に動きを止めて降ろされてゆく。
    「ドゥフシャーサナ、アシュヴァッターマン!」
     どれほど窮地に陥ろうとも朴訥で乾き、無礼を端的に吐く声がこれほどまでに焦燥に満ちていたことがかつてあっただろうか。
     紫の髪が視界に閃く。兄貴、と呻くように呟いて、呼ばれた男は赤く汚れるのも厭わず膝をつく。
     縺れるような足取りで、赤い髪の男に手を引かれた医者が漸く俺の足元へ辿り着く。
     これは近くの小規模な病院では駄目だと、このあたりの基幹病院に連絡を取るように医者が救急隊員に大声で指示を出している。
     ドゥフシャーサナが医者の処置の邪魔にならぬようにか、怪我人の手を太腿から遠ざけた。
     顔の殆どを流れる血に覆われているというのに、震える手で手首を握った弟の存在に気がついたのか、唇が動く。
     しんぱいするな、どぅふしゃーさな。
     そう読めた。
    「この状況で弟気遣うか普通!? いいから兄貴は動くなって!」
     起き上がろうとしたのか身動ぐ兄を押し留め、早く担架を! とドゥフシャーサナが懇願の絶叫とともに顔を上げた。
     目が、合う。
     兄のそれと同じ色をした瞳が見る間に憎悪に染まる。眼球の内側で鬼火が燃えるような、紛れもなく怒りの目であった。
     糾弾するのはいつだってこちら側で、ルールを破るのはあちら側だった。何故ならこいつ、ドゥリーヨダナは、そこそこ強いくせに妙なところで小心者で狡くて卑怯で、法にギリギリ触れない線でさまざまな嫌がらせを繰り返してきていたからだ。
     だが今回はその立場がひっくり返っている。ついさっき反則を犯したのは俺で、傷つけたのも俺だった。それも相手が傷つくと分かっていてわざとそうした。ここまでの大事になると思わなかったなどというのは言い訳だ。ボールとの間に身体を割り込ませてきた相手へ速度を落とさず突っ込めば、必ず怪我をさせると理解していて、その上で勝利の決め手となる一点がどうしても欲しくて止まらないことを選択した。
     結果は思いつく限りで最悪のものとなった。俺の足はメディアで宿敵と書き立てられた相手の左太腿を恐らく貫通寸前まで砕き、顔面を損壊した。
     人は体の血のどれだけを失うと命が危うくなるのだったか。腿から噴き出す鮮血は未だ止まらない。医者が必死の形相で血を止めようと傷口におそらく止血剤を含んだ布を突っ込んでいる。
     ドゥフシャーサナが奥歯を噛み締める。
    「ゆるさねえ」
     それはきっと呪いの言葉であった。
     これから、どれだけ身内やクリシュナが言葉を尽くして俺を弁護しようとするとしても。
     この手で掴んだのは栄光などではなくただただ重苦しく濯げない罪なのだと。
     いまさら糾弾されるまでもなく、誰より何よりも。一歩も動けず瞬きすら叶わず固まるだけの自分自身が知っていた。
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    hirata_cya

    PROGRESSシャア大佐が不在のソドン。そこに宝石商が「金払え」と来訪。話を聞くとキシリアに献上するためにシャアが宝石を発注したのだというが、シャアの副官たちは皆否定する。そんなわきゃない。宝石なんかで歓心を買おうとするなら奴は一隻でも多く船をぶち落としている。キシリアもたぶんその方が喜ぶ。シャア不在の間に事件を解決すべく副官たちが奔走する……!
    ソドン首飾り事件【シャアシャリ】プロローグ 野太い悲鳴が遠くから聞こえた。
     ジオニック社より派遣されてきている技術士官がすわ緊急事態か、とぱちりと目を瞬かせて振り向く。
     私はいつもの勘で悲鳴の原因にあたりをつけて素早く耳を塞ぎ、技官にも同じように耳を塞げと身振りで指示をする。
     あとはそう間がなく格納庫から船内に繋がる扉が開くのを待つ。そもそもこの分厚い金属扉を貫通してくる悲鳴といった時点で、そこまでの肺活量を持つ人間は限られるのだ。
    「大佐ァ! 艦内食中毒防止勉強会の報告書を出してくださいと再三申し上げたのをお忘れか!? 上から催促が来ていますぞ!」
     腹の底に響く銅鑼声。首と名のつくあらゆる場所が太い体躯。重力が地球の六分の一という月面では響かぬはずの重厚な足音が聞こえたような気がした。
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