雀がさえずる音が耳の奥に差し込んでくる。部屋に落ちる光がまぶしい。目を開けた鞍作は、しばし天井を見つめた。頭が重い。酒が残っているのだろう。舌が乾いて、口内がひどく苦い。
身を起こそうとしたとき、ふと胸元の感触に違和を覚えた。肌に直接あたる布の感触が、やけに少ない。視線を落とすと、上衣は腹のあたりで脱げ、下半身には薄衣が巻きつくようにして落ちていた。
見慣れぬ乱雑さで床に転がる、もう一つの衣。
葛城の、薄衣だった。
「……」
喉が鳴った。思い出せない。昨夜、どこまで酒を飲んだ。葛城が隣にいたことはかすかに記憶にある。だが、その先のことが、どうしても。
まさか。
嫌がる相手に。俺は。
絶望が、胸にしみわたっていく。血の気が引いた。こんなことがあっていいはずがない。起きてくれ、起きて叱ってくれ、殴ってくれ。鞍作は、隣にいる葛城を見やる。揺する前に、葛城が目を開けた。寝起きの、どこか呑気な顔。
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