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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    mitotte_kazu

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    食べ物作る🦍と🐇の話

    ##ディンエラ

    ロランベリージャム  じゃーん、と誇らしげなヴィエラが差し出してきたのは、籠いっぱいのロランベリーだった。
    「……美味そうだな」
    「でしょ?」
     彼女の細い指が艶々と輝くベリーを摘みあげ、ルガディンの口元に差し出してくる。
    「頼まれごとしたら、お礼にってめちゃくちゃくれたんだぁ」
     掌を示してもぐいぐいと口元目掛けて差し出されるので仕方なしに口を開いた。ベリー特有の酸味と甘味が広がり、思わず頬が緩む。
    「……でもこれ痛みやすいから、すぐ食べないとダメなんだって」
    「その前に食い切りたいな」
     二人して籠からベリーを摘み食いしつつ、考え込んだ。
     腐らせてしまうのは惜しいが二人で食べきるには量が多すぎる。だからといって知人に配るには痛む前に捕まえるのが困難な人もいる。
    「……やっぱりジャムにする?」
     顎に手を添えて呟いた彼女に、そうだな、と彼も頷いた。

     調理師の装備に着替えたヴィエラがさて、とこちらに向き直る。
    「まずはどうすればいいですか?シェフ」
     誰がシェフだ、と呆れつつ着替えを始めた彼が返す。
    「まずはジャムにしたいだけのベリーの重さを測っておいてくれるか?」
     了解と答え別の籠に必要分移し、重量を測る。
     測定値を彼に伝えると同量の砂糖も用意して欲しいとの事だった。同量!?と声を上げながらも言われた通りに砂糖を測っていく。
    「……多くない?」
     うわぁ、と大量の砂糖に圧倒されながらヴィエラがぼやくと多いな、と空き瓶を物色しながらルガディンが返す。
    「でも保存性を高めるためには必要な量だからな」
     すぐ食べるなら少なくてもいいが、と幾つか空き瓶を並べながら続けられ、へぇ、と小さく彼女は呟いた。知らなかった、と独りごちた彼女にだろうなと彼は笑った。

    「で?」
    「次はベリーに砂糖を満遍なくまぶしておく」
     籠からボウルに移したベリーに砂糖を絡めていく。煮込まないの?と首を傾げたヴィエラにルガディンはまだだと答える。
    「今日は時間があるからな。先に砂糖をまぶして少し置いておくと、浸透圧でベリーから水分が出るんだ」
     そうする事で煮込む際に水を加えなくて済むとの事だった。よく知ってるねと彼女が頭を撫でようとすると、たまたまだと彼ははにかんだ。砂糖まみれになったベリーを眺めながら彼女が更に首を傾げる。
    「そういうのって、どこから覚えてくるの?」
     そういうの?とおうむ返しをした彼に保存性とか浸透圧とかの事、と彼女が返した。あぁ、と腑に落ちたような彼が本とか姉からか、と呟いた。
     しばらくしてルガディンが言った通りに水分が出てきたベリーを煮込み出す。ふわりと甘い匂いが漂い、いい匂い、とヴィエラが頬を緩めた。
    「酸味は後でレモン果汁を加えて調整しよう」
     あまりかき混ぜると濁るらしい、と言いながら木ベラで混ぜる彼の指示に従いふつふつと浮かんでくる灰汁を彼女は掬っていく。
    「それは紅茶に入れて飲んでも美味いと聞いた事がある」
     彼の雑学は止まることを知らないようだ。煮沸消毒用に沸かしていた湯で紅茶を淹れ、言われた通りにして飲んでみる。
    「美味しい……!」
     小声で感激する彼女が彼の分を差し出す。念入りに冷まし慎重に口に運んだ彼も美味いな、と頬を緩めた。
     紅茶を楽しみながら交代で鍋の様子を見ていく。こんなものか、と呟き火を止めようとするルガディンにもう?とヴィエラが首を傾げた。
    「まだ水っぽくない?」
     もう少し煮詰めた方が、と鍋を見つめた彼女の視線を辿り、彼は頭を掻く。
    「冷めると固くなるから、少し早めに仕上げておくと良いらしいが……」
     いかんせん慣れない作業だからな、と自信なさげに顔をしかめた。むぅ、と考え込んでいた彼女が上目遣いでこちらを見つめてくる。
    「……何かいい知恵はないの?」
     む、と彼女の目から逃げるように視線を泳がせ、ないことはないが、と小さく呟いた。
    「……水の入ったグラスに一滴垂らして、それがそのままグラスの底に沈んだらいい具合、らしい」
     うろ覚えだが、と付け足したルガディンに何それ楽しそう!とヴィエラがグラスを手に足早に駆け出した。彼女が確認してくれると丁度良い具合だったようで、こぼさないよう慎重に瓶に出来上がったジャムを詰めていく。全部詰め終わった時には結構な量の瓶が紅く輝いていた。友人への贈呈用にリボンなどを用意し飾り付けをしようとはしゃぐ彼女に頬を緩めながら、使用した器具の片付けを始めた。我ながらよくここまで蘊蓄を垂れられるものだと呆れてしまうが、それを疎ましがることなく無邪気に反応する彼女のせいでもあるのでは、と思ったりなどしながら。
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    mitotte_kazu

    PASTアルバートと🐇さんの香水ネタ
    無粋と香水 部屋に戻ってきたヴィエラが疲れたようにベッドに倒れこんだ。お疲れさん、と姿を現したアルバートに疲れたぁ、と布団に顔を埋めたままくぐもった声で返す。
    「罪食い多すぎ……」
    「仕方ないだろう」
     ぼやいた彼女に彼が短く返すとうー、と何かを訴えるように呻いた。ベッドに歩み寄り、腕を組んで彼女を見下ろす。
    「ほら、飯でも食え。腹が減ってはなんとやらだ」
     わかってるぅ、と呟いた彼女がのろのろと起き上がる。と、その首元にアルバートが顔を埋めた。形容し難い声を漏らして後ずさった彼女に彼は無邪気に尋ねる。
    「香水か?」
     花の匂いがする、と首を傾げたアルバートに一瞬の間を置いてヴィエラは頷く。
    「花だけじゃないけど……」
     指を折りながら彼女が香水に含まれている植物の名を挙げていくが、幾つかピンとこないようで彼は更に首を傾げた。その様子を見てゆっくりと立ち上がった彼女が室内のドレッサーに近付く。しばらくそこを探っていた彼女がこれこれ、と綺麗な小瓶を手に彼の元へ向かって歩み寄った。ゆらゆらと彼女の手の中で揺れる瓶をなるほど、と眺めていた彼の前で、彼女は自身の手首に数回香水を吹き付ける。強く広がった香りに一瞬顔をしかめた彼があぁ、と小さく呟いた。
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