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    ことざき

    @KotozakiKaname

    GW:TのK暁に今は夢中。
    Xと支部に生息しています。

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    ことざき

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    あなたとなら。K暁

    140文字のお題でしたが、どうしても140文字で書けませんでした。
    お題メーカー「140文字で書くお題ったー(ID:375517)」様の、「貴方はK暁で『君とならできる』をお題にして140文字SSを書いてください。」より。

    #K暁

    君とならできる あんたならどうするかな。
     そんなことをよく考える。おかしいよね。何かあったときに真っ先に思いうかべるのが、家族でも友人でもない、たった一晩知りあっただけの、名前すら知らない男の人だなんてさ。しかも、あんたはとっくに死んでて、顔も声も、もうおぼろげにしか思い出せないのに。
    『大丈夫だ。オレがついてる』
     少しずつ褪せてゆくあんたの力強い声が、見たことのないあんたの穏やかな笑みが、感じたことのないあんたの大きな掌が、僕の背中をそっと押す。
     そうだ。あんたなら絶対に足を止めない。考えることを止めない。最後の最後まであがく。そして、うまくできない僕を馬鹿にしないし、逃げたがる僕をむやみに否定したり、見捨てたりしない。
    「大丈夫。僕にはあんたがついてる」
     だから僕も、絶対に足を止めない。考えることを止めない。最後の最後まであがく。そして、うまくできない自分を馬鹿にしないし、逃げたがる自分をむやみに否定したり、自棄になったりしない。
    「大丈夫。僕は僕を諦めない」
     残留思念だけが残った絵梨佳ちゃんは、凛子さんへの言葉を大切に抱えていた。後悔の言葉をスマホに遺しながら死んだ凛子さんは、『生きなさい』とまっすぐに僕を見た。僕を信じて待ち続けてくれた麻里は、『生きて』と最期まで僕のことを想ってくれた。『オレは生き抜いた』と伝言を託したあんたは、きっと笑っていた。堂々と。誇らしげに。
     僕も最期に胸を張って笑いたい。笑って皆に会いに行きたい。だから。
    「大丈夫。僕ならできる」
     あの夜のひとつひとつの出来事を忘れても、あんたと駆け抜けた過去まではなくならない。あんたの顔や声を忘れても、あんたが背中を押してくれた事実までは消えてしまわない。
     ねえ、KK。あんたとなら、僕はどんなことだってできるんだ。


      *


     東京タワーから飛びこんだ黄泉の先、記憶の扉に伸ばされる暁人の手が震えていた。カチカチと爪先が木製のノブにあたる硬質な音が耳に届く。視覚と聴覚くらいしか利かないオレにも、暁人の臓腑の冷えが伝わってきた。肺まで空気が到達しないかのような息苦しさ。足元が沈みこむような錯覚。血の気が下がり、目の前の光景が薄闇に呑まれてゆく。
     ああ、怖えよな。苦しいよな。こんなもの、まだ二十やそこらの若造が背負うには重たすぎる後悔だ。世の中にゃ、もっとお気楽に生きてるヤツはごまんといるってのに、とんだ不条理じゃねえか。
     オマエだけじゃない。オマエの妹や絵梨佳、あのいけすかねえ凛子だってそうだ。オマエが、そしてアイツらが、いったいどれほどのことをしたってんだ? なぜこんな酷えことが起こる?
     はは、新米警官だった頃にはよく思ったもんだぜ。どうしてこうも世界ってのは不公平で理不尽なのか、ってな。ああそうだ。だからオレは刑事になりたかった。恨み言のひとつすらもう語るすべがねえ、永遠に口を塞がれちまったヤツらの声を聞いてやりたかった。
     ま、それで死者の声にばかり耳を傾けて、我が子の声は放置しつづけてきたってんだから、とんだお笑い種だけどな。……すべてはもう、取り返しのつかねえ過去の出来事だ。今のオレは、耳も口も失っちまっている。永遠に。

     なあ暁人。勝手にオマエを巻き込んだあげく、駄々っ子よろしく喚き散らして暴れ回る姿を見せておいて今更だが、もうちっとだけ、オレに師匠ヅラをさせてくれよ。オレにオマエの背中を押させてくれ。最期にオレの人生も悪くなかったと思わせてくれ。
     そうすりゃオレは笑って逝ける。怨み辛みに泣き言だらけの後悔まみれでも、息子のことすら見えていなかった傲慢な独善家でも、そのことに黄泉路に頭から突っ込むまで気づかなかった大馬鹿野郎でも。それでも人は変われるってことを、オマエに見せてやれる。
     死んだあとまでテメエ一人でどうにかしようとして、たまたま近くにいた人間を躊躇なく殺そうとするような悪霊が、たった一晩知り合っただけの、名前しか知らねえ男の未来を祈ろうってんだ。たいした進歩じゃねえか。なあ?
     死者が変われて、生者は変われないなんておかしなことはありえねえ。死者に成し遂げられて、生者には成し遂げられないなんてバカなことがあるわけねえ。
     さあ、しっかり息を吐いて吸え。膝に力をいれてしゃんとしろ。ノブを握る手に力をこめるんだ。
     オレを変えたのはオマエだ、暁人。オマエがオレをここまで連れて来た。死者を変えちまうようなオマエなら、妹だって救える。どんなことだってできるさ。
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    ことざき

    DONEこぼれ落ちてゆくもの。K暁。薄暗い。

    診断メーカー【あなたに書いて欲しい物語(ID:801664)】さんの【「ぱちりと目が合った」で始まり、「君は否定も肯定もしなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字程度)でお願いします。】から。
    忘れじの行く末に ぱちりと目が合った。それで分かった。これは夢なのだと。
     僕が右手を伸ばすと、彼もまた右手を差しだしてきた。重ねた指先は突きぬけなかった。筋張ってゴツゴツとした手の甲、かさついた皮膚の感触。やや低い、じんわりとした体温。握りこめば、同じだけの力で握りかえされた。
     彼がいる。今ここに、僕の目の前に。確かな身体を持って。夢でもかまわない。だって、彼がここにいるのだ。
     心臓を鋭い痛みが貫いた。喉が締めつけられ、押し戻された空気で顔中が熱くなった。気づいた時には、目の前のすべてが歪んでいた。
     波立つ水面のように揺らめく視界では、彼の姿を脳裏に焼きつけられない。しゃくりあげながら顔を拭おうとした僕より早く、彼の手の平が頬をおおった。そのまま親指の腹で目元をこすられる。とても優しい仕草なのに、硬いささくれが皮膚に刺さって痛い。思わず息を呑むと、覚えのある苦い香りが鼻先を掠めた。
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    MEMOフォロワーの雨映さんとお話してて話題にあがったK暁の猫パロのネタが湧いてきたのでとりあえずざっくりメモ。
    なんか、こんな感じの絵描きたい......
    本編後全員生存エンドで紆余曲折あってお付き合い後同棲を始めたK暁の世界線。K暁と猫2匹のほのぼの平和物語。
    以下思いついた設定↓

    KK→仕事(怪異退治)の帰りに怪我をした猫を発見。何となく既視感を覚えてお持ち帰り。そのまま飼うことに。我が子のように可愛がる。デレデレ。最近何処の馬の骨か分からない男(猫)連れてきてうちの娘(オス)はやりません状態。

    暁人君→同棲人がどこからか拾ってきた猫に戸惑いながらも懸命に看病するうちに愛着が湧いてそのまま飼うことに。デレデレ。自分と同じ名前なのでたまに自分が呼ばれたのかと思って反応してしまうのがちょっと恥ずかしい。

    猫1(あきと)→元野良猫。車と事故にあって右側(特に顔と腕)を負傷。倒れてるところをKKに保護されてそのまま飼われることに。怪我は治っているが後遺症で右目が少し見えずらくなっている。名前は模様が何となく嘗ての暁人君に似ているということでKKが勝手に暁人と読んでたら定着してしまった。通称あき君。飼い主大好き。最近野良猫と仲良くなって家に連れてきた。
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    32honeymoon

    DONE #2023年初めK暁ワンライ
    (盛大に遅刻遅刻ゥ~!!!)
    もうすっかり専売特許になりつつある、あの夜を超えて戻ってきた二心同体K暁でお送りいたします。
    しかし結局今回もワンライどころか3時間かかってしまいました・・・これがポンコツたる所以・・・!
    でも書くのは楽しかったのでこれで良しとしてくださいませ!
    白雀さま、いつも素敵な機会を作ってくださりありがとうございます😊
    雪と兎とおみくじと。ーちらちらと舞い散る、白い雪。
    窓の外、視界を覆うその白さにほう、と息を吐けば、まだ温まり切っていない部屋の空気が暁人の吐いた息のかたちを煙のように可視化してみせた。

    『ー今日は都内でもそれなりに積もるらしいぜ』
    今日が休みでよかったな、と呟くその声にそうだね、と返して、そっと揺れるカーテンを閉める。ぺたぺたとスリッパの足音が、ちいさなワンルームの部屋に響いた。

    「・・・KKはさ、雪って・・・好き?」
    『あ?・・・・まあ、雨よかはマシだな』
    「・・・そうなんだ」

    どこか浮かない顔で、誰にともなく呟くその表情。
    もしKKが目の前に居たなら、きっと「オマエなんて顔してんだ」とでも言われただろうが、暁人の表情を映すものがない今、彼の体の中に居るKKがその顔色を知ることは叶わない。
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