Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ことざき

    @KotozakiKaname

    GW:TのK暁に今は夢中。
    Xと支部に生息しています。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 42

    ことざき

    ☆quiet follow

    診断メーカー【CP創作お題をアンケで決める(ID:590587)】から『無駄な抵抗』です。

    #K暁

    お題『無駄な抵抗』「ああいうの、KKもやったことあるの?」
     明かりを最小限に絞ったリビングで、暁人がぽつりと呟いた。
     彼の視線の先には24型液晶テレビ。映っているのは、大量のパトカーと重装備の機動隊に包囲された古いビルディングだ。
     カメラはそこからビルの上階へとズームされ、ブラインドの隙間から外の様子をうかがう、猟銃を携えた男の目元にフォーカスされる。すぐに場面は転換し、今度は、拡声器を持った一人の私服警官が大写しになった。くたびれた瑠璃色のロングコートに、ルーズに結ばれた藍色のネクタイ。驚くほど無防備なその私服警官は、防護盾に身を隠す機動隊を尻目にビルの真ん前で仁王立ちすると、覚悟を決めた男の顔つきで、拡声器を口元に添えた。
    『君たちはすでに包囲されている。無駄な抵抗は止めて、人質を解放しなさい』
     KKは呆れてものも言えなかった。粉末スープを入れ忘れたカップ麺でも啜ったかのような心地で、口元だけの生温い笑みを浮かべる。
     ちらりとだけ視線を寄越した暁人は、それですべてを悟ったらしい。無言のままテレビに向き直ると、あとはもうKKには見向きもせず、真剣な眼差しで映画に見入っていた。
     緊迫したBGMが流れるテレビでは、なおも私服警官による熱い説得が繰り広げられている。荒唐無稽なフィクションを全力で楽しんでいる恋人を邪魔しないよう、KKは密やかにため息を吐いた。呼吸に合わせて上下した肩が、密着する暁人の全身をも揺らす。が、もちろん暁人は無反応だった。
     ともすると粗探しにばかり躍起になりそうな映画を意識から追い出そうと、KKは間近にある暁人の顔だけを見つめた。
     映画館にならって常夜灯だけがともされたリビングは、テレビ画面の明滅に合わせて忙しなく色を変えてゆく。画面へ釘付けになっている暁人の白い横顔もまた、その表情をくるくると鮮やかに変えていた。
     馥郁とした珈琲の香り、かたわらにある確かな体温、耳に届くささやかな呼吸音。そしてなにより、光を反射して輝く鳶色の瞳の鮮やかさ。
     これ以上なくロマンチックな雰囲気だった。……部屋に響き渡るのが、立てこもり犯の、警察批判とは名ばかりの罵詈雑言でさえなければの話だったが。
     あげかけた唸り声をかろうじて呑みこむと、KKはそっと左腕を伸ばして暁人の肩を抱いた。やはりなんの反応も返さない彼にかまうことなく、肘をくの字に曲げて、くしゃくしゃと後頭部を掻きまわす。
     てのひらの動きに合わせて揺れる黒髪は、これ以上ないほどKKのてのひらに馴染んでいた。まるで、互いにしつらえられたかのように、しっくりと。
     こんなときでもなければ、きっと「子ども扱いするな」と叩き落とされていただろう。なんだかんだ言って、悪くはない気分だった。元刑事のKKが苦い顔をすると分かっていて、あえて警察映画を選んだ暁人に、口元がゆるむ程度には。
    「まあ、守秘義務に反しない世間話の範囲で、追々な」
     口にするのも腹立たしいと嘯き、突っぱねるのは、それこそ今更すぎる無駄な抵抗だろうから。
     ぼそりとこぼした呟きに、てのひらの中の熱がずしりと重みを増したような気がした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖👍☺☺☺💖🙏💞💞☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ことざき

    DONEこぼれ落ちてゆくもの。K暁。薄暗い。

    診断メーカー【あなたに書いて欲しい物語(ID:801664)】さんの【「ぱちりと目が合った」で始まり、「君は否定も肯定もしなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字程度)でお願いします。】から。
    忘れじの行く末に ぱちりと目が合った。それで分かった。これは夢なのだと。
     僕が右手を伸ばすと、彼もまた右手を差しだしてきた。重ねた指先は突きぬけなかった。筋張ってゴツゴツとした手の甲、かさついた皮膚の感触。やや低い、じんわりとした体温。握りこめば、同じだけの力で握りかえされた。
     彼がいる。今ここに、僕の目の前に。確かな身体を持って。夢でもかまわない。だって、彼がここにいるのだ。
     心臓を鋭い痛みが貫いた。喉が締めつけられ、押し戻された空気で顔中が熱くなった。気づいた時には、目の前のすべてが歪んでいた。
     波立つ水面のように揺らめく視界では、彼の姿を脳裏に焼きつけられない。しゃくりあげながら顔を拭おうとした僕より早く、彼の手の平が頬をおおった。そのまま親指の腹で目元をこすられる。とても優しい仕草なのに、硬いささくれが皮膚に刺さって痛い。思わず息を呑むと、覚えのある苦い香りが鼻先を掠めた。
    759

    related works

    32honeymoon

    MENU◇フォロワーさんのイラストに文章つけてみったー◆
    大変遅くなりました&あまりにも長くなってしまったので3編に分けてお出しします。
    ぽすわい様のジューンブライドイラストにどうしても物語をつけたくて書かせていただきました!
    ・便宜上全7パートに分かれています。今回は前章~プロポーズまで。
    ・プロポーズ~初夜まではR18となりますので別途パス付で上げます。
     皆様のお気に召しますと幸いですm(__)m
    雨が連れてきたはじまり<前編>別れと復活、そして再開「・・・ありがとうーおやすみ、KK」
    そう言って別れを告げたあの日。
    そういえばあの日も、あれから雨が降り始めて。まるで別れの涙のようだなんて思ったことを、覚えている。


    【覚醒前夜ー夜明けの手紙】

    これは、僕の罪の記憶。
    もう二度と同じことを繰り返さないために、ここに書き残しておくことにする。


    ーあの夜、KKはたしかに僕のなかから姿を消した。黒い靄が霧散するように消えて、僕の右の手のひらについた傷は何事もなく消えてなくなって。
    それくらい遺してくれたってかまわないと思っていた。だって、KKを思い出せる何もかもが消えてなくなってしまったような気がしたから。
    それでももう、きっと二度と逢えないのだと。そう覚悟は決めていたし、
    6347