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    ことざき

    @KotozakiKaname

    GW:TのK暁に今は夢中。
    Xと支部に生息しています。

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    ことざき

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    暁人に加え、KKの視点も書きました。(25/3/31)

    K暁。薄暗い。
    診断メーカー【あなたに書いて欲しい物語(ID:801664)】の【「二人きりの夜には」で始まり、「君がいないと息もできない」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字程度)でお願いします。】から。

    #K暁

    薄明の独り言 二人きりの夜には、肩を寄せあってお喋りしていた。
     今日あったこと、明日あってほしいこと、やりたいこと。
     春嵐がガタガタとマンションの壁を軋ませ遊びまわり、ゲリラ豪雨がばたばたとベランダで飛び跳ね踊りくるう。彼がちらりとだけ外を見て、すげえなと感嘆の声をもらすたび、僕の肩に熱い吐息がふりかかる。
     耳だけではない、身体にこそ響くその密やかな笑い声が、僕は大好きだった。

     やがて季節はいくつも巡って、二人きりで過ごす夜は終わりを告げた。
     今日あったこと、明日あってほしいこと、やりたいこと。
     止まない秋雨がコツコツと窓ガラスをノックしては去ってゆき、チラチラと降る雪が音とともに交通機関をも止めてしまう。だけど、ベッドに日がな一日寝転んで、ぼろぼろになったパスケースに嗄れ声で語りかける僕には、あまり関係のないことだった。
     彼がそうだったように、僕にももうすぐこの世とさよならする日が近づいているのだ。

     今なら言ってもいいだろうか。彼の最期には言えなかったことを。そして、今の今まで言えずにいたことを。
     彼がいなくなってからも何千回と夜を過ごし、新たな夜明けを迎えようとしている今なら。

     ねえKK。僕はね、あんたがいないと息もできないんだよ。



     ***



     二人きりの夜には、肩を寄せあい、互いの熱を感じていた。
     といっても、色っぽいことばかりしていたわけじゃない。むしろ、そうではない夜のほうがずっと多かった。
     今日あったこと、明日あってほしいこと、やりたいこと。
     オレの肩口に額を押しつけ、ぽつぽつと言葉を落としてゆく暁人の吐息は、どんな春一番よりも強く激しく、どんな炎風よりも熱く湿っている。
     汗にぬるつく皮膚を越え、筋肉を越え、骨を越え。心の臓に直接響くような彼の密やかな笑い声こそが、オレにとっては何よりも輝かしい命の響きに聞こえていた。

     やがて季節はいくつも巡り、二人きりで過ごす夜にも終わりがやって来る。
     今日あったこと、明日あってほしいこと、やりたいこと。
     変わらず言葉を紡ぐ暁人の声に、以前ほどの張りはない。それはオレも同じことで、肩口に押しつけられた白髪交じりの彼の頭を撫でるオレの手は、記憶にある爺さんのものよりずっと、しわくちゃのしみだらけになっていた。
     荒れ狂う野分に押しまけ、鋭く響く木枯らしにかき消され。途切れ途切れにしか聞きとれない彼の声を、鼻歌のように流れてゆく旋律を、ただただ静かに耳に焼きつける。
     オレがあの世に連れていくのは、こうして彼と過ごした日々の記憶、そして、この命の旋律だけだ。

     今なら言ってもいいだろうか。決して口に出すつもりのなかったひと言を。もはや声も出せない今だからこそ。
     のこしてゆく彼に聞かせるにはあまりにも残酷だが、まぎれもなく嘘偽りのない本心、ともに過ごした何千回もの夜に感じていたことを。最期のときが訪れようとしている今なら。

     なあ暁人。オレはな、オマエがいなけりゃ息もできなかったんだよ。
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    ことざき

    DONEこぼれ落ちてゆくもの。K暁。薄暗い。

    診断メーカー【あなたに書いて欲しい物語(ID:801664)】さんの【「ぱちりと目が合った」で始まり、「君は否定も肯定もしなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字程度)でお願いします。】から。
    忘れじの行く末に ぱちりと目が合った。それで分かった。これは夢なのだと。
     僕が右手を伸ばすと、彼もまた右手を差しだしてきた。重ねた指先は突きぬけなかった。筋張ってゴツゴツとした手の甲、かさついた皮膚の感触。やや低い、じんわりとした体温。握りこめば、同じだけの力で握りかえされた。
     彼がいる。今ここに、僕の目の前に。確かな身体を持って。夢でもかまわない。だって、彼がここにいるのだ。
     心臓を鋭い痛みが貫いた。喉が締めつけられ、押し戻された空気で顔中が熱くなった。気づいた時には、目の前のすべてが歪んでいた。
     波立つ水面のように揺らめく視界では、彼の姿を脳裏に焼きつけられない。しゃくりあげながら顔を拭おうとした僕より早く、彼の手の平が頬をおおった。そのまま親指の腹で目元をこすられる。とても優しい仕草なのに、硬いささくれが皮膚に刺さって痛い。思わず息を呑むと、覚えのある苦い香りが鼻先を掠めた。
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    MENU◇フォロワーさんのイラストに文章つけてみったー◆
    大変遅くなりました&あまりにも長くなってしまったので3編に分けてお出しします。
    ぽすわい様のジューンブライドイラストにどうしても物語をつけたくて書かせていただきました!
    ・便宜上全7パートに分かれています。今回は前章~プロポーズまで。
    ・プロポーズ~初夜まではR18となりますので別途パス付で上げます。
     皆様のお気に召しますと幸いですm(__)m
    雨が連れてきたはじまり<前編>別れと復活、そして再開「・・・ありがとうーおやすみ、KK」
    そう言って別れを告げたあの日。
    そういえばあの日も、あれから雨が降り始めて。まるで別れの涙のようだなんて思ったことを、覚えている。


    【覚醒前夜ー夜明けの手紙】

    これは、僕の罪の記憶。
    もう二度と同じことを繰り返さないために、ここに書き残しておくことにする。


    ーあの夜、KKはたしかに僕のなかから姿を消した。黒い靄が霧散するように消えて、僕の右の手のひらについた傷は何事もなく消えてなくなって。
    それくらい遺してくれたってかまわないと思っていた。だって、KKを思い出せる何もかもが消えてなくなってしまったような気がしたから。
    それでももう、きっと二度と逢えないのだと。そう覚悟は決めていたし、
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