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    やられたのでやり返しに行く彼氏たちの話。

    #銀博♂
    #炎博♂

    Let sleeping dogs lie 合流した部下からの報告に耳を傾けていたシルバーアッシュは、通路の向こうから聞こえてきた足音にピンと耳を立てた。生まれたてのコータスより頼りないよたよたとした足取りを雪山の狩人である男が聞き間違えるはずがない。だがその響きがいつもよりもやや乱れている上に忙しないことが男の注意を引いた。さてどのように引き止めれば一番長く言葉を交わせるだろうかと脳みそをフル回転し始めた途端、頭上の耳がもうひとつの足音を捉えた。
    「その男を捕まえろ!」
     かけがえのない友の後ろから猛スピードで追いかけてきたのはロドスのオペレーターのひとりだった。鬼神もかくやという形相で一気に距離を詰める刀術師の手をすんでのところで躱しながら、小柄なフード姿の彼は覚束ない足取りでこちらへと駆けてくる。そのフェイスガード越しの視線が即座にシルバーアッシュから逸らされたため、雪豹の尾を一振りした狩人の行動は決まった。
    「シ、シルバーアッシュ! どうして!」
    「私を目の前にして無視などとつれないことを言わないでくれ」
    「そのまま押さえていろ」
    「ヒィッ! エンカク、だからこれは、」
     小柄で体力の少ない彼の行動力を奪うのは造作のないことだった。両腕をホールドし、できるだけ負担のない姿勢で羽交い絞めにしたままジタバタと暴れる両足をぐるりと尾で抑え込む。そうしてしまえば身じろぐこともできない哀れな戦術指揮官の彫像の完成である。
     追いついてきたサルカズはその哀れな戦術指揮官を前に、一瞬の躊躇もなくその白衣へと手をかけた。
    「――で、何発殴られた」
    「腹に一発、床に転がされて好き放題蹴られた。頭を守るのに必死で回数はおぼえてない」
    「ほう」
     顕わになった薄く白い腹にはくっきりと痣が浮かんでいた。色からして暴行を受けてからまだそう時間は経っていない。彼のこの時間の予定としてはこの地のいくつかの組織との会合があったはずだが、どうやら予期せぬトラブルが起こったらしい。
    「想定の範囲内ではあった。だからアーミヤは連れて行かなかったし、念のため防護用のジャケットも仕込んでおいた」
     男は淡々とした口調で告げる。その言葉は執務室で幼いオペレーターたちに菓子を振舞うときと何ら変わりはなく、ゆえに通路の体感気温はイェラグの冬山ほどに低下した。
    「俺を直前で護衛から外したのもそのためか」
    「そっちは別の理由。他に頼みたいことがあったから戦力を温存しておきたくて、……ッ!」
     逡巡なく傷口に爪を立てられ、男は悶絶して発言を中断した。まったく、これでバレずに作戦を続行するつもりだったというのだから恐れ入る。
    「医務室に連れて行け。俺は少々用事が出来た」
    「まあ待て。盟友よ、この男はカランド貿易が一時預かろう」
     その一言だけでシルバーアッシュの意図を理解した彼は、痛みにうめきながらもがっくりとうなだれた。脱力した身体を抱きしめながら久方ぶりの低い体温を堪能していると、恨めし気な声で彼は負け惜しみを言い放った。
    「君たちは優しすぎるよ。いつか悪い人間に騙されるからな」
    「お前より悪い男などそういまい」
    「その通りだけどー」
    「おい」
    「お前は今からわが社の臨時スタッフだ。盟友が私を心配して護衛にと寄こしてくれたが、私は勝手に散策に出てトラブルに巻き込まれることになる」
    「知らん。勝手にしろ」
    「盟友よ、私のために明日の午後どこかで一時間空けられるな?」
    「また膝枕?」
    「一晩中でもいいが」
    「オーケイ、ならディナーをご一緒にいかがかな、社長様。貰い物だがエトルシの十二年ものがある」
    「いいだろう」
    「エンカク、副官のペッローはもう姿を消してると思う。潜入捜査官だから彼のことは深追いしなくていい」
    「手が滑るかもしれんな」
    「彼が五体満足なら次の危機契約の配置を考え直してやる」
    「おぼえておこう」
     話は終わった、とばかりに背を向けるサルカズにあれこれ他愛のない文句を浴びせていた男の拘束を解きつつ部下を呼び、医務室へ連れて行くよう言いつける。
    「もーまったく君たちのおかげで計画が三段飛ばしで解決してしまった。どうしてくれる」
    「はいはい、ドクター様。抱えますからしっかり捕まっててくださいね」
    「ひぇっお姫様にされちゃう……!」
    「それだけ冗談が言えるなら大丈夫そうですね」
     大人しく運ばれていく彼を見送って、さて、とシルバーアッシュは退屈な狩りに全力を出すべくその頭脳をフル回転させ始めたのであった。
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    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
    2835

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    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
    2030

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    DOODLEおじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。
    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
    1956

    nbsk_pk

    DOODLE転生現パロ記憶あり。博が黒猫で花屋の炎さんに飼われている。博猫さんは毛づくろいが下手すぎてもしゃもしゃにされたのを自力で戻せないので、原因にブラッシングを要求しました
    ねことのせいかつ いくら朝から店を閉めているとはいえ、生花という生き物相手の職業であるためやらなければならない作業は多い。ましてや今回の臨時休業の理由は台風、取引先各所への連絡から店舗周辺の点検と補強までひと通り終わらせたときには、すでに窓の外にはどんよりとした黒い雲が広がり始めていた。


    「ドクター?」
     店の奥にある居住スペースの扉を開けても、いつものようにのたのたと走り来る小さな姿はない。しん、とした家の気配に嫌な予感を募らせたエンカクがやや乱暴な足取りでリビングへと駆け込んだとして、一体誰が笑うというのだろう。なにせあのちっぽけな黒猫はその運動神経の悪さに反して脱走だけは得手ときている。植物や薬剤をかじらないだけの聡明さはあるというのに、頑として水仕事で荒れた手のひらで撫でられねば一歩も動かないと主張する小さな生き物に、どれだけエンカクが手を焼いたことか。だがエンカクの心配をよそに、雨戸を閉めた仄暗い部屋の中で黒猫はあっさりと見つかった。キッチンの出窓、はめ殺しの小さな窓には雨戸もカーテンもないため、今にも落ちてきそうなほどの暗雲がよく見て取れた。自身が抱いているものを安堵とは決して認めないものの、やや歩調を緩めたエンカクは窓の外をじっと見つめたまま動かない黒猫の背にそっと立つ。
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