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    ししとう

    @44toshishi

    支部にあげるほどきちんと書いてなくてTwitterにあげるには文字数が多い書きたいところだけ書いたものを投げる供養場。

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    ししとう

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    読ドロ。支部にあげるほどきちんと書いてないしTwitterにあげるにしては文字数が多いのでこちらに供養。

    #ドラロナ
    drarona
    #読ドロ
    oscillatoria

    帰る場所 ロが城に来た。
     いつもの赤い服はボロボロで、どこもかしこもドロドロだった。
    庇うように脇腹を手で押えている。
     怪我をしているのだ。
     ドは慌てて城に招き入れて衣服を脱がし、体の汚れを落とした。
     抉られたような脇腹の傷を丁寧に消毒し、薬を塗ったガーゼを当ててテープで止め、包帯を巻き付けた。
     ロは終始無言で、ドが「痛むの?」と聞いても俯いたままだった。
     処置を終え、夜着を纏わせようとしたドの手を、少し熱を帯びたロの手が掴む。
    「どうしたの」
    とドが聞けば
    「抱け」
    とロ。
    「そんな傷で出来るわけないでしょ」
     とドはロに夜着を頭から被せる。
     不服そうなロにドは「何か作ってくるね」と部屋を後にする。

     あの手の熱さ。怪我のせいで熱があるんだろう。
     氷枕も作ってあげよう。
     何が食べられるだろうか。
     食べやすくて消化も良くて……。
     …何があったんだろう。
     いつもなら怪我をしたってネタになる!って嬉しそうなのに。
     聞いてもいいのだろうか。
     何があったの?と。
     私が、聞いても。

     そんな事を考えながらロのために食事と氷枕を作り、部屋へと戻る。
     ベッドにはロの姿はない。
    「退治人君……?」
     ボロボロの衣服はまだある。
     お誘いを断ったから、怒って帰ってしまったのだろうか。
     夜着のままで?
     サイドテーブルに食事を、枕元に氷枕を置いてドはロを探す。
     と言っても見当はついていた。
     自らの寝室へ赴き、棺桶の傍に膝をつく。
     そうっと蓋を開ければ、ドの枕を抱きしめて身を縮めるロがいた。
    「どうしたの?」
     ドが声を掛けるが、ロは返事をしない。
    「言ってくれないと分からないよ」
     そっと髪を撫でると、ロがその手を弾いた。
    「……お前も強いロ様がいいんだろう。」
    「……?」
    「こんな怪我したみっともねぇ俺なんて興味無いんだろう。」
    「どうしてそう思うの」
    「抱けって言ったのに」
    「だからそれは怪我が心配で…」
    「カッコ悪い俺なんて興味無いんだろ」
    「そんな事一言も言ってないでしょ?じゃあ君は?私がもし吸血鬼じゃなくなったらもう会いに来てくれないの?」
    「……」
    「ねぇ?聞いて?」
     ドは子供をあやす様に優しくロの髪を撫でる。
    「私はね、君が好き。カッコイイ君も好きだけど、美味しそうにご飯を食べる君も、ソファでうたた寝してる君も、原稿に追われて焦っている君も、全部好き。私にとって君はロ様じゃないんだよ。ただの君だよ。」
     そこで一度言葉を切り、ちゅっ、と額にキスした。
    「ただの君がね、私は好き。」
    「…俺がロ様じゃなくても、俺はここに来ていいのか?」
    「もちろんだよ。むしろ誰も知らない君を知っているのが私だけだと思うと嬉しい。」
     髪を撫でるドの手に、ロが手を重ねる。
    「今回は、ちょっとヤバかった。」
     ロはぽつり、ぽつりとその身に起こったことを話し始めた。
    「マジで死ぬかと思った。まぁ華々しく最期を飾って死ぬのも悪くないかもな、と思った。」
     そんな、と言いかけたドの頬にロがそっと触れる。
    「…目を閉じた瞬間、お前の顔が浮かんだ。」
     引鉄を引いた。
     あとはどうやって敵を倒したのかは記憶がない。
     全身が悲鳴を上げていたし、意識も朦朧としていたけれど、足だけはここに向かっているのは分かった。
    「…お前に会いたいと思ったんだ。」
     ドのマントを掴んだ手に力がこもる。
    「死にたくねぇ、なんてカッコ悪いこと考えちまった。お前のせいだ。」
     双眸から涙が零れる。
     その涙を指でそっと拭い、ドはロの眦にキスをした。
    「…カッコ悪くなんかない。生き物は皆、生きたいと思うものだよ。」
     ドの言葉に、ロはふるふると首を振る。
    「ロ様はそれじゃダメなんだ。」
    「どうして?」
    「死にたくない、なんて臆病者みたいだろ。」
    「そうかなぁ…。でも君死んじゃったらロナ戦はどうするの。」
    「だらだら続けてネタ切れになって打ち切られるより、作者死亡の為未完の方が箔が付くだろ。」
    「君ねぇ…。」
     ドはふぅ、と溜息をつく。
     どう言えば伝わるのだろうか。
     この愚かな人間に。
     死んで欲しくないと。
     生きていて欲しいと。
    「…ねぇ?退治人君。」
    「…何だよ。」
     不貞腐れたように視線をあさっての方向に投げたロにドはそっと口付ける。
    「私はね、君を愛しているよ。」
     反論を封じ込めるように唇を重ね、合間に言葉を紡ぐ。
    「君が私のせいで死にたくないって思ってしまうから責任をとれって言うのなら取ってあげる。」
     口の中が熱い。
    「じゃあ平穏だった私の生活をめちゃくちゃにした責任を取って?って私が言ったら」
     絡めた指も熱い。
    「君は、どう責任を取ってくれるの?」
     熱に潤む瞳。
     まずは休息を与えなければ。
    「ねぇ?」
     ドは自らの舌に牙を突き立てた。
     持てる気合い全てで死ぬのを耐える。
     そのまま深く口付けて、ロの口の中を掻き混ぜた。
     やがて溢れた唾液をこくんと飲む音がして、ロの瞳の光が薄れる。
    「いい子。まずはお休み。」
     命令に背くことなく、ロは瞳を閉じた。
     それを見届けた後、ドはほっとして砂になる。
     ロを眠らせるためとはいえ、自分の牙は痛かった。

     死なずによく耐えたよね。

     ゆるゆると再生し、棺桶の中で眠るロを見つめる。

     褒めてくれたっていいじゃない?

     棺桶の蓋をそぅっと閉め、その上に身を伏せた。

     私の領域で眠る君。
     今だけは君は私のもの。
     このままずぅっと閉じ込めて、ずぅっと君を愛でていたい。
     君が思っているよりも私、きっともっとおぞましい生き物だよ?
     分かっているのかな。
     君はそんな私にどれ程見初められているのかって。
     作者死亡で未完の方がいい?
     だったら敵対する吸血鬼に剥製にされて未来永劫城に飾られましたとさ、の方が物語的にはいいと思うなぁ。
     君をこのまま閉じ込めて。
     毎日血を与えてお人形にして。
     来る日も来る日も君を愛でて。
     その輝きが薄れる前に美しいまま剥製にして。
     私が生きる長い年月を、ずっと私のそばで。

    「……。」

     なーんて。
     馬鹿馬鹿しい。
     ずっと一緒にいたいのは本当だけれど、お人形の君に興味はないよ。
     私の言いなり?
     ひと時の戯れぐらいならそれも面白いかもね。
     でも。
     物言わぬ君の剥製なんて、怖気がするね。
     …そりゃあ、ただ死なれてしまうよりは、まぁ、いいかもしれないけれど。
     君には笑っていて欲しいんだよ。
     君が好き。
     トラブルに巻き込まれて沸き立つ、ワクワクした顔が好き。
     想定外の出来事に引き攣る顔も好き。
     強気に誘ってくるくせに、すぐにグズグズになって甘えてくるところが好き。
     とろとろになってうわ言みたいに私の名を呼ぶ声が好き。
     あぁ、君の好きなところなんてキリがないよ。
     どうしたら君を独り占めできるかな?
     どうしたら、君を…。
     どうしたら……。

    「おい。」
     ガタッと音がして、棺桶の蓋が開いた。
     あのまま眠ってしまっていたらしいが、一体どのくらい眠っていたのかドは体がバキバキで死んだ。
     死んでんじゃねぇよばーか、という声。
     急いで再生し、ドは両手でロの両頬を包み、そのまま額を合わせる。
     触れる額も頬も熱くない。
     熱は下がったようだった。
    「腹減った。」
    「あぁ、うん。ご飯は出来てるけど冷めちゃったね。温め直してくるよ。」
    「そのままでいい。」
    「だぁめ。お腹に入れるなら温かいものじゃないと。」
    「腹に入れば一緒だろ。」
    「違うの!」
     客室に戻り、置きっばなしだった冷めきった食事を運ぼうとしたのを阻まれる。
    「あ!もう!」
     ドの手から奪った食事を、勢いよくロが腹に収める。
    「せめてもうちょっとゆっくり食べなよ…。」
     冷めきった紅茶を飲み干したロが、口元を拭う。
    「熱は下がった。」
    「ん?うん。」
    「飯も食った。」
    「そうだね?」
    「じゃあもういいな。」
    「?何が?」
    「ヤろうぜ?」
    「え?」
     ドは抱き上げられ、ベッドに放り投げられた。
    「ちょ…退治人君?!」
    「据え膳だぜ?」
     細められた目。
     釣り上がる口角。
     ドはごくりと唾を飲む。

     どんな表情でも綺麗でカッコいいなんてずるいなぁ。
     でも。
     それでその瞳の奥の陰を隠しているつもり?

    「…キスをしよう。」
     跨ったまま見下ろしているロに向かってドが両手を差し出す。
    「はっ、やっとその気になったかよ。」
     ゆっくりと体を倒したロの首に腕を回し引き寄せる。
     軽く唇を触れ合わせた後、ドはそのままぎゅっとロを抱きしめた。
    「…怖かったね?」
     そう言いながらあやすようにロの髪や背を撫でる。
     ロはびくりと肩を震わせて跳ね起きた。
    「あぁ!?んな訳ねぇだろ!」
    「駄目だよ、そんなに離れたらキスができない。」
     ドが両手を伸ばせば、ロはチッと舌打ちをした。
    「…おいでよ。」
     もう一度促すと、ロは逡巡したもののドにその身を預けた。
    「いい子。」
     抱きしめて、キスをして。
     髪を撫でて、肩を撫でて。
     頬を寄せて耳元で囁く。
    「君を、愛しているよ。」

     だから、ね?ここに帰って来て。
     私はいつでも君を待っているから。
     ロ様じゃない君をね。

    「…ばーか…。」
    「うふふ。」
     少しだけ揺らぐ青い瞳。
     隠された口元。
     赤くなった耳。
     君って、隠し事、下手。

     ねぇ?
     少しだけ甘い時間を過ごしたら、お茶にしよう。
     君が好きなケーキを焼くよ。
     クッキーでもタルトでも。
     そうしたら一緒に眠ろうよ。
     寄り添って、手を繋いで。
     きっと素敵な夢しか見ないだろうね。
     何回目かの朝が来て、怪我が治ってしまったら、君は行ってしまうのだろうけど。
     食事とベッドを用意して待っているよ。
     夜の訪れとともに君が来てくれたら「おかえり」って迎えるから、君にもこう言って欲しいんだよ。
     「ただいま」って。
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