Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    片栗粉

    @kata9kuri1

    FFじゅーよん自機絡みの創作物とか諸々を置いていく場所になる予定です。今後14以外も並ぶかも

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 😍 👏
    POIPOI 5

    片栗粉

    ☆quiet follow

    うちの子(侍)×うちの子(詩人)のBLです。すけべにいたりそうな雰囲気です。キャラ設定はこちらをご覧ください→https://poipiku.com/8793653/9349731.html

    #FF14うちの子創作
    ff14OurChildCreation
    #BL小説
    blNovel

    雨とセンチメンタル 雨は時々、自分を感傷的にさせる。黒衣森は雨が降っていることが多く、必然的に雨の日には嫌な思い出が付きまとう。
     ここラベンダーベッドも例に漏れず雨が多く、まさに小雨が降り出したところであった。
    「少し夜風にあたってこようかな」
    ユリウスはエールの注がれたジョッキをぐいと飲み干して席を立つ。玄関扉を押すと微かに聞こえる雨音。
    「一服したら戻るよ」
    ひらひらと手を振って、扉を閉めた。玄関ポーチで感じる夜の風は、酒を飲んで少し火照った体に心地良い。ふうと息を吐いて煙草に火を点けた。
     たまたま、偶然、こればかりは仕方ないと思っているが、雨の日に母が亡くなったのを思い出しては感傷的になる。
     口にくわえた煙草を吸い、細くゆっくりと紫煙を吐き出す。ユリウスは普段であれば煙草を吸わないが、時々こうして感傷に浸る際に1人で嗜む。冒険稼業の合間に各地で集めた煙草をひとつひとつケースに収めて持ち歩いている。今日のは林檎の甘酸っぱいフレーバーだと店員から聞いていた。林檎の甘い香りと爽やかな酸味が口内に残る。
     2〜3度、吸って吐き出して…としていると、背後にある扉が開いた。
    「平気か?」
    この家の家主であるアサギリが、ユリウスの様子をうかがいにやってきた。
    「うん、大丈夫。ちょっとセンチになってるだけさ」
    「あんた、雨の日は時々顔が暗いから…」
    「グリダニアで育つとさ、どうしても雨の日って多くてね…雨に嫌な思い出って多く付きまとっちゃうんだよね」
    心配そうな顔でこちらを見つめるアサギリに背を向けて煙を吐く。付き合いはそれなりの月日にはなってきたが、自分の過去については今まで話したことはない。
    「そうか」
     ユリウスは仲間として、友人として、アサギリはいい男だと思っている。ただ、腹を割って自分たちの生い立ちについては未だ語ったことはなかったのだ。お互い、訊かれないし、訊かない。
    「訊かないの?」
    「話したいなら聞くさ」
    隣に立って、背中をポンと叩かれると、なんだか今日は、話してみようと、何故かそんな気持ちになった。
    「18歳の時の話だけど…僕の母がね、雨の日に亡くなってるんだ。争いに巻き込まれたとかじゃなくて、病気でね…弟もまだ小さかったから、そりゃあもう、大変だったんだ」
    アサギリは、頷いて黙って聞いてくれている。
    「母っていう存在は大きいよね、どうしたって。悲しかったけど、あの時は妹と弟をどうにかしてやらなきゃって思って…自分の悲しみとの折り合いがつけられなかったんだと思う」
    上手く消化できなかった感情を、今でも時々こうして1人噛み砕かないといけないのだ。なんとなく今の自分の表情を見られたくなくて、顔を逸らしたままでいたら、大きな手で頭をガシガシと撫でられた。
    「それでも、家族を亡くすってのはしんどいだろ」
    「ちょっと…僕きみより歳上だよ」
    「別にいいだろ、たまには」
    思わず笑いが込み上げてきて、頬を緩ませながら彼の手をどける。やっと顔を向き合わせようと、アサギリの方へ向き直るとあからさまにホッとした顔でこちらを見つめている。
    「ねえ、きみも煙草いるかい?」
    視線がかち合ったまま、右手で煙草をかかげると、そのままアサギリに手首を捕らえられた。
    「なに?今度は煙草やめろっていうお説教かな」
    「違う」
    なんの気まぐれか、掴まれた手を引かれて煙草が地面に落ちて、アサギリの靴が火種を踏み潰す。顔が近付いてきて、そのまま唇が重なった。すぐに唇は離れていったが、何も言えないまま数秒の間、ただ見つめ合った。
    「煙たいだろ?」
     どう切り出すべきか、何を言うのが正解なのかわからなくて、そんなことしか言えなかった。しかし、キスをされたことを特に不快に感じるわけでもなかった。ただなんとなく心の欠けていた部分に収まるような感覚がした。
     もう一回してみたらどうなるんだろう。今度はユリウスから仕掛ける。触れるだけのキスをして顔を離すと、アサギリの右手が腰に回ってくる。さっきよりも体の距離が縮まって、そのまま再び口付けを交わす。火が点いたように、何度も感触を、形を確かめるように唇を食む。
     頭の中がじんわりと熱で侵されるような感覚が心地よくて、このまま身を委ねようかとぼんやり考えたところで、いつの間にか強くなっていた雨音に気付き唇を離した。
    「ごめん…酔いすぎたのかも。今のはお互い忘れよう」
    「なんでだ。忘れる必要あるのか」
    至近距離にある彼の瞳が、真剣で、掴まれたままの右手首が痛い。
    「だって、こんな…」
    「そもそも、あんた酔ってないだろ」
    図星だった。理性はあったのに、拒まなかったし、2回目を求めてしまったのはユリウスだ。
    「俺はあんたのことが好きだよ」
    雨の音がうるさいのに、アサギリの声はハッキリと聞き取れる。動けないままでいると、掴まれた手首は解放されて、腰に回った彼の手も離れていった。
    「気の迷いだって、それで終わらせたいなら…俺はあんたに従う」
    「アサギリ、僕は」
    逃げ道まで用意してくれているのに、どうしてか逃げる気になれなかった。
    「あんたは、どうしたい?」
    雨音が強さを増していく。雨は嫌なことを思い出すはずなのに、今、自分の胸を埋め尽くしているのは彼で、ならば一度、この感情に身を任せてみようと右手でアサギリの角に触れた。
    「僕も、もしかしたらアサギリのことが好きなのかもしれない」
    慈しむように表面を撫でると、アサギリはびくりと肩を揺らす。アウラ族は角で愛情表現をするのだったか、彼の妹のヒギリから以前聞いたことがあった。
    「あんた、それわかっててやってるのか」
    彼の瞳の奥に、何かが揺らめくのを感じ、瞬間、体を強く引き寄せられて唇を塞がれる。余裕のないキスが、鼓動を激しくさせた。何度も噛みつかれるようなキスをされて、彼の角の先端が頬に当たり、引っかかれるような小さな痛みを感じるが、気にならなかった。求められる喜びを知ってしまった。
    「好きだ」
    普段は寡黙で喋りたがらない彼の余裕の無さが、たまらなく胸を締め付ける。掠れた声で耳元で囁かれてしまえば、受け入れざるを得ない。
    「んぅ…っ、あ、アサギリっ」
    獣に食べられる小動物の気分とは、こういうものだろうか。体に回った彼の腕は振り解けないくらいに強い。このままだと、溶けて死んでしまうのでは無いかと錯覚するほど、深く口付けられて体が熱くなっていく。
    「ダメ、これ以上ヤバい…ここまでにしよう?」
    僅かに働いた理性でストップをかけると、アサギリは素直に応じてくれた。名残惜しそうに離れていく腕が愛らしい。
    「なあ、あんた今夜は帰るのか」
     雨は好きじゃなかったのに、今夜はそれが変わりそうな気配がした。
    「ユリウス」
    熱を孕んだ声で名前を呼ばれて、体がしびれる。
    「雨がひどいから、泊めてもらおうかな」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    片栗粉

    DONEうちの子(侍)×うちの子(詩人)のBLです。すけべにいたりそうな雰囲気です。キャラ設定はこちらをご覧ください→https://poipiku.com/8793653/9349731.html
    雨とセンチメンタル 雨は時々、自分を感傷的にさせる。黒衣森は雨が降っていることが多く、必然的に雨の日には嫌な思い出が付きまとう。
     ここラベンダーベッドも例に漏れず雨が多く、まさに小雨が降り出したところであった。
    「少し夜風にあたってこようかな」
    ユリウスはエールの注がれたジョッキをぐいと飲み干して席を立つ。玄関扉を押すと微かに聞こえる雨音。
    「一服したら戻るよ」
    ひらひらと手を振って、扉を閉めた。玄関ポーチで感じる夜の風は、酒を飲んで少し火照った体に心地良い。ふうと息を吐いて煙草に火を点けた。
     たまたま、偶然、こればかりは仕方ないと思っているが、雨の日に母が亡くなったのを思い出しては感傷的になる。
     口にくわえた煙草を吸い、細くゆっくりと紫煙を吐き出す。ユリウスは普段であれば煙草を吸わないが、時々こうして感傷に浸る際に1人で嗜む。冒険稼業の合間に各地で集めた煙草をひとつひとつケースに収めて持ち歩いている。今日のは林檎の甘酸っぱいフレーバーだと店員から聞いていた。林檎の甘い香りと爽やかな酸味が口内に残る。
    2805

    related works

    嗟弓@ A29393221

    DONEアテンション
    BLオリジナルストーリー 異世界現代風 小説参考キャラビジュイラストあり
    他サイトに掲載済み
    ね、見て綺麗かつては人間が支配していた青い星。その支配はある日を境に変わってしまった。人間以外の動物が人間と同等の知を持ち、四足歩行を突如として始めたのだ。動物上分類で、自らと種類が異なると相手を他種族と呼び、逆もそう呼んだ。人間の築いた文化は崩れ、元々飼われていた動物の文化と混ざり、新しいものとなった。そこで起きた社会問題についてこの本では解く。
    1〜
    『他種族と混ざってはいけない』これはこの世界に周知されたルール。
    他種族を決して愛しても、恋をしていても。体を重ね、一線を越えることはこの世で社会的に死ぬのに等しい。周囲にバレると死刑は確定する。
    もし、仮に他種族と体を重ね産まれてくる子がいるのなら。その子はまず死に至る。有名かつ常識的な話。自らの持つ種族遺伝子とパートナーの持つ種族遺伝子が別である…つまり他種族同士場合。その遺伝子同士は決して結び付くことはない。ゲイやレズ…同性同士では子が孕めないことに似ている。ところが、それらと違うのは腹を大きくできるところだ。しかし残念ながら、腹を痛めて産む子は生物ならざる姿、形で産まれる。そして半日もすれば死に絶える。肺も、エラもなく心臓どころか、脳も骨もない体で産まれ息もできず死ぬ。
    6629

    片栗粉

    DONEうちの子(侍)×うちの子(詩人)のBLです。すけべにいたりそうな雰囲気です。キャラ設定はこちらをご覧ください→https://poipiku.com/8793653/9349731.html
    雨とセンチメンタル 雨は時々、自分を感傷的にさせる。黒衣森は雨が降っていることが多く、必然的に雨の日には嫌な思い出が付きまとう。
     ここラベンダーベッドも例に漏れず雨が多く、まさに小雨が降り出したところであった。
    「少し夜風にあたってこようかな」
    ユリウスはエールの注がれたジョッキをぐいと飲み干して席を立つ。玄関扉を押すと微かに聞こえる雨音。
    「一服したら戻るよ」
    ひらひらと手を振って、扉を閉めた。玄関ポーチで感じる夜の風は、酒を飲んで少し火照った体に心地良い。ふうと息を吐いて煙草に火を点けた。
     たまたま、偶然、こればかりは仕方ないと思っているが、雨の日に母が亡くなったのを思い出しては感傷的になる。
     口にくわえた煙草を吸い、細くゆっくりと紫煙を吐き出す。ユリウスは普段であれば煙草を吸わないが、時々こうして感傷に浸る際に1人で嗜む。冒険稼業の合間に各地で集めた煙草をひとつひとつケースに収めて持ち歩いている。今日のは林檎の甘酸っぱいフレーバーだと店員から聞いていた。林檎の甘い香りと爽やかな酸味が口内に残る。
    2805

    recommended works