金製の彫像が動き始めて久しい。戯れが許される立場として、時折この彫像の手入れも兼ねて観察することが増えた。
彼ら──などという人間的呼称を用いて良いのかは分からないが──を見ていると、その表情や仕草が想像よりはるかに豊かな事に驚く。彼らの出自は知らない。主に訊いても、よく覚えていない、としか返ってこないからだ。しかし像の挙動はさながら生ける人間で、無邪気に笑い、音楽に身を委ねる。我々とはまた違う魔法の賜物であると悟るのだ。
彼らの手入れは至って難しくはない。金製の彼らはおよそ錆びる事も翳る事も知らず、半ば悠久の時を変わらぬ姿で過ごす。弛まない美を、宴に誘われた人間は羨み、崇敬する。そんな彼らに我々がすべきことなど、せいぜい魔力が絶えていないかの確認か、軽い埃払いくらいなものなのだ。今日も、門扉を開けて彼らの姿を目に留めた。じきに新月となる月明かりの薄い夜闇でも、彼らはまるで光を放つように美しかった。ゆるやかな光沢が頬と鎧をつつむ。ため息をついて像を見上げた。
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