ソファでぐうたれていると悠仁が来た。顔を見ただけでも僕のHPは回復を始めたのに、二、三言葉を交わした所で電話が鳴る。
仕方なく部屋をあとにする時、僕の座っていたソファに入れ替わり悠仁が座った。
「せんせー温かいね」
抜け殻のぬくもりに身を寄せて笑う君。
はー可愛い。
「またね、ゆーじ」
「応! 気を付けてね」
◇
楽しそうな声の方へ足を向ける。覗く教室には僕の受け持つ生徒たち。
「オツカレサマンサ~」
僕を見て嬉しそうに返事をしてくれるのは一人だけ。
「せんせーおかえり」
立ち上がりハイタッチ。なんならハグしても……そう思い両手を伸ばしたが、悠仁は気付かず流れるように出口へ。丁度次の授業への移動のようだ。
他の二人も立ち上がり、悠仁に続く。
誰も僕の胸には飛び込んで来ない。
僕は悠仁が座っていた椅子に座り
「ゆーじゆーじ、温かいね」
椅子の熱を全身で受け止めたくて、長い手足を必死に椅子に巻き付けると
「ふはっ、せんせー可愛いね」
なんて。
「気持ちわるっ」
「変態ですね」
辛辣な言葉が聞こえたのは気のせいにするとして、僕を『可愛い』って言っちゃう悠仁はやっぱり可愛い。
「皆、頑張ってしごかれておいで〜」
「応! 行ってくるね!」
ひらひらと手を振って、三人仲良く教室を出る。
無機質な木の板の微熱と君の笑顔。今日も僕のハートが充電された。
いつまで隠しておこうか。まぁ僕としてはあまり隠してはいないんだけれど。察するにあまり悠仁に伝わってる気はしないが、それでも今は、これくらいでいいのかもしれない。