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    甘ったれ鶴丸の話

    #くりつる
    reduceTheNumberOfArrows

    鶴丸国永を甘やかさないと出られない部屋「ここを鶴丸国永を甘やかさないと出られない部屋とする!」
     と、鶴丸は部屋にやってきて早々に、そう宣言した。
     ここ数日の鶴丸は、ひたすらにただ出陣を繰り返す毎日である。浮かぶは赤披露。いくら戦が好きといえど限度がある。
     今も耳の奥で派手な音楽が鳴り響いているぜ、と文句を言いながら畳の上に座り込んだ。楽器兵とかいう、此度の戦で与えられた特別な兵装の影響だろう。
     俺は、と悩みつつ大倶利伽羅は口を開いた。
    「……俺は、割と、あんたに対して甘いと思う」
    「驚いた! 自覚があったんだな」
     鶴丸はまんまるに目を見開いた。
     けれど、ち、ち、と指を振る。
    「甘いだけじゃダメなんだよ。『甘やかす』っていうのが大事なのさ」
     なにが違うのかさっぱりである。
     仕方ねえなあ、と鶴丸は大倶利伽羅の膝に頭を乗せた。
    「ほれ、撫でろ」
     大倶利伽羅の手を勝手に取り、自分の頭へと載せる。
    「………………」
     猫の方が可愛げがある。
     言いたいことを飲み込んで、わしゃわしゃと頭を撫でた。わー、と鶴丸が悲鳴をあげる。
    「ばか。やさしくない」
    「こういうのは、もっと別の連中に頼め」
    「やだ。きみがいい。な、そのチョコくれ」
     とんだわがまま放題である。こうなった鶴丸はテコでも動かないことを知っている。
     大倶利伽羅は溜め息を吐き、食べていたチョコレートのかけらを鶴丸の方へと運んでやった。
    「きみの膝、硬すぎて痛いな」
     これで鶴丸を部屋から放り出さないのだから、やはり自分は鶴丸に甘い方だと大倶利伽羅は自画自賛するのである。

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    忘れ草③進捗 耳を劈く蝉の鳴き声、じめじめと肌に纏わりつく湿気、じりじりと肌を焼く灼熱の陽射し。本丸の景色は春から梅雨、そして夏に切り替わり、咲いていたはずの菜の花や桜は気付けば朝顔に取って代わられていた。
     ここは戦場ではなく畑だから、飛沫をあげるのは血ではなく汗と水。実り色付くのはナス、キュウリ、トマトといった旬の野菜たち。それらの世話をして収穫するのが畑当番の仕事であり、土から面倒を見る分、他の当番仕事と同等かそれ以上の体力を要求される。
    「みんな、良く育っているね……うん、良い色だ。食べちゃいたいくらいだよ」
    「いや、実際食べるだろう……」
     野菜に対して艶やかな声で話しかけながら次々と収穫を進めているのは本日の畑当番の一人目、燭台切光忠。ぼそぼそと小声で合いの手を入れる二人目は、青白い顔で両耳を塞ぎ、土の上にしゃがみ込んでいる鶴丸国永だ。大きな麦わら帽子に白い着物で暑さ対策は万全、だったはずの鶴丸だが仕事を開始してからの数分間でしゃがんで以来立ち上がれなくなり、そのまますっかり動かなくなっていた。燭台切が水分補給を定期的に促していたが、それでも夏の熱気には抗えなかったようだ。
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    DONEくりつる6日間チャレンジ2日目だよ〜〜〜〜〜!!
    ポイピク小説対応したの知らんかった〜〜〜〜〜!!
    切望傍らに膝をついた大倶利伽羅の指先が、鶴丸の髪の一房に触れた。

    「…………つる、」

    ほんの少し甘さを滲ませながら、呼ばれる名前。
    はつり、と瞬きをひとつ。 

    「…………ん、」

    静かに頷いた鶴丸を見て、大倶利伽羅は満足そうに薄く笑うと、背を向けて行ってしまった。じんわりと耳の縁が熱を持って、それから、きゅう、と、膝の上に置いたままの両手を握り締める。ああ、それならば、明日の午前の当番は誰かに代わってもらわなくては、と。鶴丸も立ち上がって、その場を後にする。

    髪を一房。それから、つる、と呼ぶ一声。
    それが、大倶利伽羅からの誘いの合図だった。

    あんまりにも直接的に、抱きたい、などとのたまう男に、もう少し風情がある誘い方はないのか、と、照れ隠し半分に反抗したのが最初のきっかけだった気がする。その日の夜、布団の上で向き合った大倶利伽羅が、髪の一房をとって、そこに口付けて、つる、と、随分とまあ切ない声で呼ぶものだから、完敗したのだ。まだまだ青さの滲むところは多くとも、その吸収率には目を見張るものがある。少なくとも、鶴丸は大倶利伽羅に対して、そんな印象を抱いていた。いやまさか、恋愛ごとに関してまで、そうだとは思ってもみなかったのだけれど。かわいいかわいい年下の男は、その日はもう本当に好き勝手にさせてやったものだから、味を占めたらしく。それから彼が誘いをかけてくるときは、必ずその合図を。まるで、儀式でもあるかのようにするようになった。
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