鶴丸国永を甘やかさないと出られない部屋「ここを鶴丸国永を甘やかさないと出られない部屋とする!」
と、鶴丸は部屋にやってきて早々に、そう宣言した。
ここ数日の鶴丸は、ひたすらにただ出陣を繰り返す毎日である。浮かぶは赤披露。いくら戦が好きといえど限度がある。
今も耳の奥で派手な音楽が鳴り響いているぜ、と文句を言いながら畳の上に座り込んだ。楽器兵とかいう、此度の戦で与えられた特別な兵装の影響だろう。
俺は、と悩みつつ大倶利伽羅は口を開いた。
「……俺は、割と、あんたに対して甘いと思う」
「驚いた! 自覚があったんだな」
鶴丸はまんまるに目を見開いた。
けれど、ち、ち、と指を振る。
「甘いだけじゃダメなんだよ。『甘やかす』っていうのが大事なのさ」
なにが違うのかさっぱりである。
仕方ねえなあ、と鶴丸は大倶利伽羅の膝に頭を乗せた。
「ほれ、撫でろ」
大倶利伽羅の手を勝手に取り、自分の頭へと載せる。
「………………」
猫の方が可愛げがある。
言いたいことを飲み込んで、わしゃわしゃと頭を撫でた。わー、と鶴丸が悲鳴をあげる。
「ばか。やさしくない」
「こういうのは、もっと別の連中に頼め」
「やだ。きみがいい。な、そのチョコくれ」
とんだわがまま放題である。こうなった鶴丸はテコでも動かないことを知っている。
大倶利伽羅は溜め息を吐き、食べていたチョコレートのかけらを鶴丸の方へと運んでやった。
「きみの膝、硬すぎて痛いな」
これで鶴丸を部屋から放り出さないのだから、やはり自分は鶴丸に甘い方だと大倶利伽羅は自画自賛するのである。