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    甘ったれ鶴丸の話

    #くりつる
    reduceTheNumberOfArrows

    鶴丸国永を甘やかさないと出られない部屋「ここを鶴丸国永を甘やかさないと出られない部屋とする!」
     と、鶴丸は部屋にやってきて早々に、そう宣言した。
     ここ数日の鶴丸は、ひたすらにただ出陣を繰り返す毎日である。浮かぶは赤披露。いくら戦が好きといえど限度がある。
     今も耳の奥で派手な音楽が鳴り響いているぜ、と文句を言いながら畳の上に座り込んだ。楽器兵とかいう、此度の戦で与えられた特別な兵装の影響だろう。
     俺は、と悩みつつ大倶利伽羅は口を開いた。
    「……俺は、割と、あんたに対して甘いと思う」
    「驚いた! 自覚があったんだな」
     鶴丸はまんまるに目を見開いた。
     けれど、ち、ち、と指を振る。
    「甘いだけじゃダメなんだよ。『甘やかす』っていうのが大事なのさ」
     なにが違うのかさっぱりである。
     仕方ねえなあ、と鶴丸は大倶利伽羅の膝に頭を乗せた。
    「ほれ、撫でろ」
     大倶利伽羅の手を勝手に取り、自分の頭へと載せる。
    「………………」
     猫の方が可愛げがある。
     言いたいことを飲み込んで、わしゃわしゃと頭を撫でた。わー、と鶴丸が悲鳴をあげる。
    「ばか。やさしくない」
    「こういうのは、もっと別の連中に頼め」
    「やだ。きみがいい。な、そのチョコくれ」
     とんだわがまま放題である。こうなった鶴丸はテコでも動かないことを知っている。
     大倶利伽羅は溜め息を吐き、食べていたチョコレートのかけらを鶴丸の方へと運んでやった。
    「きみの膝、硬すぎて痛いな」
     これで鶴丸を部屋から放り出さないのだから、やはり自分は鶴丸に甘い方だと大倶利伽羅は自画自賛するのである。

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    mito_0504

    PROGRESSセンチネルバース第三話 進捗報告 後半も書き終わったらまとめて推敲してぴくしぶにあげます
    忘れ草③進捗 耳を劈く蝉の鳴き声、じめじめと肌に纏わりつく湿気、じりじりと肌を焼く灼熱の陽射し。本丸の景色は春から梅雨、そして夏に切り替わり、咲いていたはずの菜の花や桜は気付けば朝顔に取って代わられていた。
     ここは戦場ではなく畑だから、飛沫をあげるのは血ではなく汗と水。実り色付くのはナス、キュウリ、トマトといった旬の野菜たち。それらの世話をして収穫するのが畑当番の仕事であり、土から面倒を見る分、他の当番仕事と同等かそれ以上の体力を要求される。
    「みんな、良く育っているね……うん、良い色だ。食べちゃいたいくらいだよ」
    「いや、実際食べるだろう……」
     野菜に対して艶やかな声で話しかけながら次々と収穫を進めているのは本日の畑当番の一人目、燭台切光忠。ぼそぼそと小声で合いの手を入れる二人目は、青白い顔で両耳を塞ぎ、土の上にしゃがみ込んでいる鶴丸国永だ。大きな麦わら帽子に白い着物で暑さ対策は万全、だったはずの鶴丸だが仕事を開始してからの数分間でしゃがんで以来立ち上がれなくなり、そのまますっかり動かなくなっていた。燭台切が水分補給を定期的に促していたが、それでも夏の熱気には抗えなかったようだ。
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