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    シール帳の話

    #文具沼住人な大倶利伽羅くんと本の虫な鶴丸さん
    #くりつる
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    文具沼住人な大倶利伽羅くんと本の虫な鶴丸さん③ 大倶利伽羅の部屋には、彼にはなかなか似合っているとは言い難い可愛らしいシール帳が一冊存在している。どうやらこれは乱藤四郎にプレゼントされたものらしい。
     この本丸の大倶利伽羅と乱は仲がいい。と思う。と言ったらきっと大倶利伽羅はいつものように馴れ合うつもりはないと主張するから敢えて言うことはなかったが、鶴丸からしてみてみればふたりは仲がいい。
     大倶利伽羅は乱の次に顕現したようで、乱は大いに彼を構ったという。残念ながら鶴丸が顕現したのはそれから半年も後のことだからその光景を見ることが叶わなかったのが残念なところである。
     大倶利伽羅ほどではないが乱も文具の類が好きだ。彼が回覧板の類を回すとき決まって小さなカードにささやかなメッセージを書いて挟んでいるのを微笑ましく思っている。そういうやりとりをするのはたいてい、顕現順の都合もあり大倶利伽羅とだった。大倶利伽羅の文具沼入りの原因は彼にもある気がする。
     メッセージカードには、シールが貼ってある。犬だとか、猫だとか、そういうものが多い。
     大倶利伽羅は自分でそう明言したことはないが、動物の類も好きだ。もちろん、これも敢えて指摘したことはない。何事も、指摘しない方がいいことがある。そうした方が、微笑ましい日常は続くというもので。
     大倶利伽羅は、カードに貼られているシールを丁寧に剥がしては、ノートに貼り替えているようだった。
     それを見て、乱が特付きのお祝いにと大倶利伽羅へノート帳をプレゼントしたそうだ。
     その割に、きみ、自分ではシール買わないよな。
     パラパラとシール帳を捲りつつ、鶴丸が言う。
     使用する自分に想像がつかない、と大倶利伽羅は返した。
     大倶利伽羅にとってシールとは自分がコレクションするものではなく、伝言や贈り物に添えるものらしい。
     ううん、なかなかに難しい。鶴丸は唸った。
     きみだって乱に伝言くらいするだろ。そのときに添えてやればいい。
     ……柄じゃない。
     まあ、それはそう。
     一蹴した大倶利伽羅に、鶴丸は素直に頷いた。
     乱のくれたシール帳は、大倶利伽羅が貼り直した数々の動物で溢れていて、さながら小さな動物園のようだった。可愛らしい、小さな世界だった。
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    「みんな、良く育っているね……うん、良い色だ。食べちゃいたいくらいだよ」
    「いや、実際食べるだろう……」
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