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    koshikundaisuki

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    12/3 影菅アドベントカレンダーチャレンジ

    #影菅
    kagesuga

    手料理番組に提出するアンケートの中には「料理は得意ですか?」という質問もあった。
    「いいえ」と書いて出せばそこに触れられることはない。

    話を振られても「自炊はあまり」と言えば「指先命のバレー選手は、包丁とか危ないですもんねぇ」とみんな勝手に納得するので楽だ。
    すると今度は「普段はどうしてるんですか」という質問が来る。
    食事にどうするも何もないといつも思うのだが、侑さんに「あれは飛雄くんに彼女がおんのか、遠回しに探っとんねんで」と教えられて驚いた。
    「作ってくれる人とかは?」とニヤニヤ聞かれるのは、そういうわけだったのだ。
    そうとも知らずに「寮には寮母さんがいました」と答えていた。その話をすると菅原さんはゲラゲラ笑った後、「お前はそれでいいんだよ」と言った。



    冷蔵庫を探ったあと、ふと考える。鍋じゃないものが食べたい。
    冬になると「メニューに迷ったら鍋にしろ」と言われる。低カロリーで野菜とタンパク質が摂れる。味も変化できるので飽きないし、体も温まるから、と。
    とは言えどここのところ、俺たちの夕飯は鍋が続いていた。

    昨日はキムチチゲ、一昨日は水炊き、その前はゴマ豆乳、そしてカレー鍋、もつ鍋、しゃぶしゃぶ、白菜と豚バラのミルフィーユ鍋、また水炊き、海鮮鍋、トマト鍋。何か鍋でなくてはいけない理由でもあったんだったか。振り返っても何も思い出せない。料理のバリエーションの少なさ、時間のなさ、面倒くささ。そういったものが「10日連続鍋」という結果を引き起こしたのだろう。
    俺は食料をストックしている棚を漁り、材料がそろっていることを確認すると、まな板と包丁を取り出した。
    野菜は適当に水で洗い、ピーラーを使って皮を剥く。少しだけ皮が残ってしまったが、気にせずそのまま小さく切る。猫の手、を意識してゆっくり切っていく。コトン…………コトン…………。自分でも少し苛立たしくなるくらいにゆっくりと。ジャガイモは煮込むうちに溶けてしまうので大きめに。ニンジンはいつも固いので小さめに切った。玉ねぎは大きく半分に切ってから手で皮をむき、みじん切り(にしては粒がデカい)に、もう半分はザクザクと荒く切った(くし切りというらしい)。
    やたら重い鍋に油を入れ、豚肉と野菜を放り込み、炒める。ある程度熱が通ったら火を細くして放置する。
    放置、と言われたところで特にやることが思いつかなかったので、コンロの前で棒立ちになっていた。
    コトコトと鍋の蓋が浮き始めたところで様子を見ると、野菜から染み出た水分でひたひたになっていた。
    カレールーを割って入れ、あとは適当にかき混ぜたら完成だ。ひとくち味見をしてみたが、好みの味になっていた。
    満足して火を止め、ふと思う。
    「……もしかしてこれも鍋か?」


    風呂を洗っていると、脱衣所からLINEの電子音が響いた。手に付いた泡を洗い流してスマホを確認する。菅原さんからだった。
    「今から帰ります!」というメッセージとアド郎のスタンプ。
    俺は「先風呂入りますか?」と送る。程なくしてアド郎が風呂に使っているスタンプが返ってきた。お湯をため、米を洗う。
    炊飯器のボタンを押すと、「ただいまぁ」と鼻の頭を赤くした菅原さんが部屋に入ってきた。

    風呂から出た菅原さんは、「カレーの匂いがする」と嬉しそうだった。
    「最近鍋続いてましたからね」
    「今日とんこつ鍋とかだったらどうしようかと思ってた」
    菅原さんは冗談交じりに言い、炊きあがったご飯を皿によそった。
    俺は水の入った大きめのマグカップに卵を落とし入れ、爪楊枝で慎重に黄身を刺す。レンジで加熱すれば温泉卵の完成だ。

    お湯を切った卵を、盛り付けたカレーライスに乗せると菅原さんがはしゃいだ声を出す。
    「これこれ、影山のカレーって感じ」
    「菅原さんには辛さ足りないかも」
    ハバネロペッパーの小瓶を置くと、「せっかくだし最初はそのまま食べる」と手を合わせ、ペコリと頭を下げた。

    「カレーってさ、個性出るよな。影山は絶対豚肉使うだろ。んで温玉が乗ってる」
    「そうっすね」
    「ニンジンも丸いな」
    「菅原さんのは、なんか……ゴロゴロ?してますよね」
    「乱切りって言うんだよ」

    菅原さんはバクバクとカレーを食べ、お代わりをすると辛さを調整した。
    「優越感」
    ニコニコと嬉しそうな様子に「優越感?」と聞き返す。
    「俺は影山の手料理が食べられる数少ない人間なので」
    「大したもんじゃないですけど」
    「いやいや、美味いよ」
    食べ終えた食器を、菅原さんが下げてくれる。ごはんを作ってもらった方が皿を洗う、というのはどちらが決めたことでもない。いつの間にかそうなっていた。スポンジを手に取り、菅原さんが口を開く。
    「それにさ、影山がはじめて麻婆豆腐つくってくれた時、俺感動して泣いちゃったもんな」
    まだ、俺が高校生の頃の話だ。俺は思い出して笑った。
    「菅原さん、ほんとに泣いてましたね」
    「言うなし……」
    泡だらけの食器をすすごうと横に立つと、菅原さんは照れて唇を尖らせていた。


    終わり

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    koshikundaisuki

    DOODLE菅受けワンドロより「あざやか」をお借りした影菅の小話
    雑談「んでな、俺は言ってやったわけ。『いや、それは唐揚げへの解像度低すぎるだろ!』って」

     通常ならここでひと笑い起こるはずだったが、凪。まさに凪。俺はゆっくりと斜め後ろを振り返る。神妙な顔をした影山と目があった。話を聞いていなかったわけではないらしいな、と頷く。
     影山との会話は度々こうなる。例えば昼食を食べたあと「あーもう腹パンパンだわ、パンだけに」と言おうものなら、笑うでもなく、冷たい目を向けてくるでもなく、まじめな顔で「今の、どういう意味ですか?」とか言ってくる。俺が駄洒落を言うときなんて8割何も考えずに口にしてるだけだから、本当はくだらない、と一笑に付してくれるくらいがありがたいのだが、真面目に尋ねられてしまっては俺も誠意をもって「今ランチでパン食ってたじゃん?だからお腹いっぱいなことを『お腹パンパン』って言葉に言い換えてパンと掛けてんだよね」と説明することになる。ギャグは鮮度が命であり、説明なんてしようものなら笑いの神様は死ぬ。解説を聞き、影山は「なるほど」と納得した様子で頷く。その目は「やっぱ菅原さんはすげえ」とでも言いたげに輝いている。影山は感動はしてるが別に笑いはしない。なぜなら笑いの神様はもう死んだからだ。
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    koshikundaisuki

    DOODLEラッキーすけべでお題をいただきました、影菅ノssです
    ラッキースケベ(仮)聞いて欲しい。これは俺の懺悔と、とある追憶の記録だ。

    俺、菅原孝支は宮城県内某所で小学校教諭をしているごく普通の成人男性だ。俺には年下の彼氏がいるのだが、それはそれは可愛く、そして時には大変格好良い男で、バレーボール男子日本代表にも選ばれたトップアスリートである。名前は影山飛雄という。詳しくはWikipediaでも見てほしい。

    愛し愛されかれこれ8年ほど恋人としての関係が続いている。遠距離の時期が長く続いたこともあり、取り立てて大きな事件などは起きなかった俺たちだが、半同棲をはじめて1年半がたつ今、影山を怒らせてしまった。理由はさほど重要ではないので割愛するが、俺自身の不甲斐なさが原因だ。俺は自らの過ちを認めて非礼を詫び、彼の中にあった誤解を解くためそれまでの成り行きを丁寧に説明し、最後に影山を本当に愛していることを伝えて仲直りとなった。焦った。影山が小さな不満を貯め込み、それが表面に漏れてしまうことは珍しくないが、面と向かって不満を爆発させたのはほぼ初めてだったので、俺たちの関係もこれまでかと思った。抱きしめられた影山は落ち着くためにゆっくりと深呼吸をしたあと、シュンとした表情のまま「俺も、すみませんでした」と呟いたのでたまらない気持ちになる。でもそうだよな。長い付き合いだからこそ、きちんとお互いのことを話しいくべきだよな。
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