そこにあるもの(冒頭サンプル)サイドテーブルに置かれた燭台の上でろうそくの火がゆらゆらと揺れている。その橙色の光が安宿の薄汚れた壁に映って、目の前に立つ男の影もまるで影絵のように軽快に揺れた。
狭い部屋にはベッドが一つあり、その横には古びて脚ががたついたサイドテーブルが置かれている。そのほかに、椅子や棚、絨毯などはなく、ただ眠るためだけに用意された小さな空間だった。ベッドの傍の壁には小さな窓がある。粗末な質の悪いカーテンを通り抜けた月明かりは、否応無しにシーツの上に白い光を落としていた。
視界の端でろうそくの火が揺らめくのを感じる。ゆらゆらと火はずっと微かに揺れている。目の前のライオスの白い右頬が、橙色に染まっているのが目に留まった。
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