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    とうこ

    じゃっと書いた落書きとか、なんかの下書きとか、適当な奴をぽいぽいしていきますよ!

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    とうこ

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    腕枕したい七五

    #七五
    seventy-five



     呼吸音を聞きながらページをめくる。
     電子書籍隆盛の昨今だが七海は本の形態を好んでいる。それは「耳と耳の間にある最大の資産」の利率を上げるものだし、「最後まで売ってはならない」ものだから所持しておくこと自体に意味があるし、いずれ自分がこの世のものに所有権を持たなくなったとしても「低きに流す」ことができる媒体だからだ。
     とはいえ。
     たとえ海辺だろうと高原の一軒家だろうと、電気も電波も無くとも楽しめるものであっても、この状況では些かよろしくない。
     ひとり寝の夜ならば好きに光量を調節し好きな姿勢で本を読むことができる。
     しかしながら、今夜の七海の傍には五条がいる。
     もうすっかり深い眠りに入り、髪の先、指先までぽかぽかと温かくなった、長々しい体を、ゆったりのびのびと弛緩させて、のんびりと呼吸している。砂浜に打ち寄せる波のように、ゆらゆら寄せては返す呼吸で、七海の腕まで揺れる。
     五条の頭越しに開いたページは、そうでないとベッドライトの光が当たらず文字が読めないからだ。電子書籍ならバックライトでどの姿勢でも読めるのだろうけれど、薄暗い中では可読領域が制限されてしまう。
     七海は伸ばした左腕の先、片手で本を開いている。途中には五条のもふもふとした白い頭があって、そのせいで左のページは半分ほど隠れてしまって見えない。仕方がないのでその部分を読むときは、右手で髪の毛を押さえつけることにした。
     そうして静かにページが進み、楽しい思索の散歩にふけってしばらく、うっかり夢中になって五条の頭を押さえつけたままにしていたせいか、手の下で
    「……ん〜」
     といかにも眠たげな呻き声が聞こえた。
     起こしてしまってはうるさいからと手を離したけれどもう遅い。
     白い扇のような睫毛がゆるゆる上がり、その下から薄暗い中でも仄かに光を帯びた六眼が現れる。二、三度、まばたきをして、瞳孔が揺れる。それから七海の顔を見て、
    「……おふぁよ〜」
     と気の抜けた力の抜けたへろへろの挨拶をする。
    「……まだ寝てていいですよ」
     七海は本心からそう言ったのだけれど、五条はもう一度目を閉じようとはしない。代わりに
    「オマエ本読んでんの? なに?」
     とタイトルや目次を読もうとするし、栞も挟んでないのに閉じてしまってぽいとその辺に放り投げるし、挙げ句の果てには七海の頭を抱き抱えて
    「眠れないんなら僕が腕枕してやる」
     と嫌がらせなのか余計なお世話なのか判断しづらいことをしてくる。
    「結構です。離してください。本が読めませんので」
    「なんで? 僕に腕枕されたくないの?」
    「やめてください。本も返してください」
    「僕の腕枕、高いよ?」
    「査定もとったことないくせに適当なこと言わないでください」
     七海は諦めた。腕枕というよりも頭に両腕で抱きつかれているようなものだから寝るにしても寝にくくて、正直やってられないと内心イラっとはしたのだけれど、もうこの際は遠慮会釈もなく五条の肩口に頭を乗せて思い切り体重をかける。そうすると今度は五条の片脚が腰の上に乗ってきて、更に身動きが取れなくなった。
    「五条さん、これは腕枕じゃなくて抱き枕じゃないですか?」
    「え? そーなの? まーよくない?」
     適当だな、七海は五条に対して何度も抱いた感想を今夜も抱く。
     満足したらしくすぐに寝入った腕の中、どうしたものか。中途半端な照明の中、本はもう手元になく、抱き枕にされて寝返りも打てず。
     暇にあかせて七海は、顔の上を通る五条の二の腕に口をつける。白くてすべすべしている。起こさない程度に、ごくごく軽く吸う。
     軽く、ささやかに吸っていても、時間をかければ跡は付く。七海はだいだいいろの照明の中、ためつすがめつしながら、丁度いい色と大きさになるように調節する。
     丁度いい色と大きさって何だと、七海は自分でも思ったけれど、今自分が動ける範囲で何かできるいたずらはないかと思いはせ、そのため機嫌も直り愉快な気分で白い腕に口を付ける。
     二の腕だけでは足りなくて、肩から肘までかかったけれど、合計十個の小さなキスマーク、端から七個目だけ大きく濃くつけて、できあがりを眺めて満足する。
     どうせ目が覚めたら反転術式ですぐに消してしまうだろうけれど、これを目にしたときの反応は面白そうだ。七海は少し朝が楽しみになる。
     そうして五条の両腕の中でやっと目を閉じて、大きく息を吸い、ゆったりと長く息を吐く。じわじわと肩や腕や首から力を抜く。五条の呼吸のペースにつられてゆっくりと息をする。そうして七海にしては、寝つきよく眠りについた。
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    エイリアン(小)

    DONE七五(過去作品)
    第0回お題「料理」
    ...労働はクソだ。
    体全体を包み込む倦怠感、目の奥がジンとして熱い上、吹き付ける風は冷たく、指先から体温が奪われていくのを感じる。ひどく眠い。
    少し早足気味に入ったエレベーターホール、ボタンを押して、やってきたエレベーターに乗り込んだ。
    ゆっくりと上がっていくエレベーターの中でこめかみをほぐすように押す。
    別に呪霊に手こずったわけではない。全ての任務において呪霊の級は二級が殆どであり、幾つかの任務では一級討伐のものもあったものの、そのどれもが一級でも下、どちらかと言えば二級に近い程度の呪霊だった。
    問題なのは、その量。
    呪術高専を規として2、3時間の移動を必要とする任務が多数あり、全てこなすのに丸四日。
    柔らかいとは言えない車内のシートで短時間睡眠のみを取り続け、食事は冷たいコンビニ食ばかり。
    決して車のシートやコンビニ食を卑下しているわけではないのだが、やはり体は柔らかい布団や温かい食事を求めてしまう。
    時刻は0時、深夜帯に差し掛かるこの時刻に外を出歩くような住民なんてこのマンションには少ない。
    静まり返った廊下に自分の足音のみが響く。
    部屋の前、鍵を取り出して差し込み、回した。
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    さかばる

    MOURNING映画観た記念に書いた七五です!なんと一ミリも映画関係ないです。お仕事の話。
    ※注意※
    妄想爆発のじゆぐ、じゆれいが出てくる
    モブが出てくる
    作者が七五って言ったら七五です
    映画観たよ!記念。 壱、男と『紅』
     
     
     男はその日、仕事でなんだか物々しい屋敷の前に来ていた。男は解体業者の作業員である。数日前に依頼を受けて目の前の屋敷の解体を頼まれた。隣に立っているのがその依頼主である。二十代らしいが顔は青白く、目が落ち窪んで三十代位に見える。生気が無い顔をしている癖に、目がギラついていて金にがめつそうだった。この屋敷を取り壊して土地を売っ払うつもりらしい。社長がかなり安い金額で引き受けさせられたとこぼしていた。これじゃ利益が出ないと断ろうしたが、名家の御子息で断り切れなかったそうだ。
     男は依頼主を前に、後ろに六人の部下を従えながら現場の敷地内に入る。いかめしい門を潜るとそこには美しい庭園が広がっていた。今の季節が花の季節の春だからだろうか。色とりどりの花が植えられ、植えられた木々も綺麗に整えられている。解体を依頼された家屋まで歩く間、枯山水まで見ることができた。こんな美しい庭園を壊してしまうのは勿体無い気がするが、仕事だ。仕方がない。
    12430

    Sssyashiro

    DONE【展示】書きたいところだけ書いたよ!
    クリスマスも正月も休みなく動いていたふたりがい~い旅館に一泊する話、じゃが疲労困憊のため温泉入っておいしいもの食ってそのまましあわせに眠るのでマジでナニも起こらないのであった(後半へ~続きたい)(いつか)
    201X / 01 / XX そういうわけだからあとでね、と一方的な通話は切られた。
     仕事を納めるなんていう概念のない労働環境への不満は数年前から諦め飲んでいるが、それにしても一級を冠するというのはこういうことか……と思い知るようなスケジュールに溜め息も出なくなっていたころだ。ついに明日から短い休暇、最後の出張先からほど近い温泉街でやっと羽が伸ばせると、夕暮れに染まる山々を車内から眺めていたところに着信あり、名前を見るなり無視もできたというのに指が動いたためにすべてが狂った。丸三日ある休みのうちどれくらいをあのひとが占めていくのか……を考えるとうんざりするのでやめる。
     多忙には慣れた。万年人手不足とは冗談ではない。しかしそう頻繁に一級、まして特級相当の呪霊が発生するわけではなく、つまりは格下呪霊を掃討する任務がどうしても多くなる。くわえて格下の場合、対象とこちらの術式の相性など考慮されるはずもなく、どう考えても私には不適任、といった任務も少なからずまわされる。相性が悪いイコール費やす労力が倍、なだけならば腹は立つが労働とはそんなもの、と割り切ることもできる。しかしこれが危険度も倍、賭ける命のも労力も倍、となることもあるのだ。そんな嫌がらせが出戻りの私に向くのにはまあ……まあ、であるが、あろうことか学生の身の上にも起こり得るクソ采配なのだから本当にクソとしか言いようがない。ただ今はあのひとが高専で教員をしているぶん、私が学生だったころよりは幾分マシになっているとは思いたい。そういう目の光らせ方をするひとなのだ、あのひとは。だから私は信用も信頼もできる。尊敬はしないが。
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