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    setsuen98

    @setsuen98

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    setsuen98

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    まだ付き合ってない🌊🔮♀。
    純情ビ/ッ/チなゥは可愛いと思ってます。

    タ/イ/ナカ/サ/チさんのLipstickって曲が可愛くて好きで、スーーーーキにしました💄
    良ければ是非聴いてみてください。

    #suuki

     “初デート”の待ち合わせ40分前。待ち合わせ場所にこんなに早く来たことなんて、人生で一度もない。

     車で迎えに来てくれるというスハを待つ間、つい何度も背後のショーウィンドウに映り込む自分の姿を覗き込んでしまう。
     助手席に乗るならいつもより顔が近くなるから、まつ毛パーマもかけ直したし、念入りにスキンケアもした。そのおかげでメイクのノリもバッチリで、一軍コスメを駆使して念入りにメイクした顔は、どこからどう見ても隙のない過去一の仕上がりなんじゃないかと思う。
     肌触りがお気に入りのニットに、綺麗なラインに惹かれてこの日のために買ったタイトスカート。コートを羽織って、奮発して買ったヒールが高めのショートブーツとバッグを合わせれば、もう完璧。…なのに、今更スカートの丈がちょっと短かったかも、なんて気にしていたりする。でもこれを着こなす私は誰よりもいい女だと、自信をつけて今日に挑むには必要なアイテムだった。
     小さなバッグから手鏡を取り出すと、お気に入りのリップで彩られた唇で「大丈夫」と独りごちる。ドレッサーの前でどうか上手くいきますように、と願いを込めて、メイクの仕上げに丁寧に唇へのせたお気に入りのリップが、きっと私に力を貸してくれる。


     今までの私はその時楽しければ良くて、自分が魅力的だと感じた人とは誰とでも仲良くしてきた。恋人とかじゃない。付き合うとかよく分からなかったし、私自身は縛られたくないし、“好き”の違いだってよく分からなかったから。
     そんな風に自由に生きていたのに、スハに出会ってからそんな考えが覆されてしまった。

     最初の頃は、正直その他の男の人と同じようにしか思ってなかった。背が高くて顔も良くて、隣にいると自慢できる。私の気持ちを満たしてくれる人の内の一人。
     きっとスハだって、そんな私の「お友達たち」と同じように、私のことをアクセサリーにでもしたいんだろうと思っていたのに、いざ誘いを受けてみれば、どこまでも健全な遊びに拍子抜けした。
     待ち合わせをして、ショッピングをしたり映画を見て、夕食を食べて最寄駅でさようなら。三度目のお出かけの時に「家まで送ってくれないの?」と訊いたら、「家知られるの怖くない…?送っても大丈夫?」なんて訊いてくるから、あまりにも驚いて言葉を失ってしまった。
     それからも高校生のような健全すぎるお出かけを重ねたのち、何度目かの帰り際告白をされた時には、まさか私に対してそんな気持ちがあったのかと心底驚いたほどで、また言葉を失ったのをよく覚えている。
     真剣な告白をされるなんて初めてのことだったから、どう答えていいのか戸惑う私を気遣った「驚かせてごめんね。もし嫌じゃなければ、これからも一緒に遊びに行ってくれる?」という言葉に、その時はただ頷くしか出来なかった。

     きっと、あの時にはとっくにスハに惹かれていたんだと思う。そうじゃなければ、嫌なものはすぐに嫌と言ってしまう私が返事に困ることなんてあり得ない。
     ちゃんと自覚するまでに時間が掛かってしまったし、正直このままの心地よい関係でもいいかもしれないなんて思ったりもしたけど、先日スハの隣に女の子がいるのを見て決断した。その子はたまたま妹さんだったからよかっただけで、いつか“彼女”がそこに立つかもしれない。そんなのは耐えられない。
    思い立ったが吉日と「デートしよう。」なんて今まで二人の間では使われなかった言葉で誘った数日前の私を恨んでいるけど、それくらいの発破をかけないと動けなかった。

     リップが取れていないことを確かめてから鏡をバッグに仕舞いつつ、時計をちらり。
     こまめに見てしまう時計の針はいつにも増して進みが遅くて、思わずため息を溢しながら周りを見渡せば、楽しげに寄り添う恋人たちが目に入る。少し先に立つ女の子も私と同じようにちらちらと時計を確かめていて、楽しみでたまらないとでもいうように綻んだ表情が可愛らしい。私の顔なんて、緊張で強張っているのに。
     そんな中目の前のスペースにゆっくりと止まった車に期待して顔を上げるけれど、そこに先ほどの可愛い女の子が乗り込んでいく。約束の時間まではまだまだあるのに、勘違いしてしまったことが恥ずかしくなり、深呼吸をして気持ちを落ち着けながら「待たせるなんていい度胸ね」なんて台詞で気合いを入れてみるけど、スハの気持ちを知ったうえで友達ヅラをして散々待たせてきた私に、その台詞を言う資格は今日はない。…でも明日からは“友達”じゃない呼ばれ方で、堂々と手を繋いで隣にいられるようになりたい。
     きっとまだ私のことを好きでいてくれている感じがするし、勝算はかなりあるけど、スハは良くも悪くも誰にでも優しい。彼女がいないから一緒に出かけてくれるだけで、私を好きな気持ちはもう薄れている可能性だってある。何度考えたって、この不安な気持ちはスハにしか拭えない。彼は気付いてくれるかな。

     そんなことをモヤモヤと考えている私の前に、静かに車が滑り込んでくる。時計が示すのは、待ち合わせの30分前。
     ドアの開閉音に顔を上げると、私がこの場にいることに驚いた表情の待ち人の姿が目に入り、途端に羨んでいた周りのカップルが消えて、彼しか目に入らなくなる。たったそれだけで心臓が大きく跳ねて、身体中が彼を好きだと訴えてくるんだから、思わず笑ってしまった。

    リップの入ったバッグをそっと撫でて「大丈夫、大丈夫。」と心の中で何度も呟く。
    だって、今日の私はお気に入りに包まれて、世界中の誰よりも魅力的なんだから。

    今日が終わる頃には、世界で一番幸せになっているはず!
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    Replies from the creator

    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
    3139

    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
    3790

    setsuen98

    MOURNING🦁👟みたいな何か。付き合ってません。
     ほぼ満席状態の店内。二人掛けのテーブルにルカと向かい合って座ってから、なんとも言えない無言の時間が過ぎていく。と言っても実際には大した時間は経っていないけど、黙り込んだまま相手が口火を切るのをただ待つ時間は何倍にも長く感じられる。だからと言って、いつもの快活とした姿とは異なり神妙な顔でテーブルを見つめるルカに「話って何?」なんて無遠慮に本題へ切り込むことなんて出来なくて、手持ち無沙汰にカップに口をつけブラックコーヒーをちびちびと啜るしか出来ず、日差しが降り注ぐ外をいい天気だなぁ…なんて現実逃避まがいに眺めていた。
     「シュウに相談したいことがある」と改まって連絡がきた時は、一体何事かと身構えてしまった。まさかルカの身に何か深刻な問題でも起きているのかと心配になり即座に了承の返信を打てば、カフェでお茶でもしながら聞いて欲しいとの思いのほかゆったりとした回答に、勝手な杞憂だったのかと胸を撫で下ろしたのが数日前のこと。ただ実際に顔を合わせてみるとこんな風に一切読めない様子で、大きな問題でないことを願う最中、突然ルカが顔を上げ僕の方を見つめたかと思えば、また直ぐに視線を落とし何度か口をモゴモゴとさせてようやく口を開いた。
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    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
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    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
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