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    setsuen98

    @setsuen98

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    setsuen98

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    幼なじみパロ🔗🔮。
    ただじゃれてるだけ。付き合ってません。

    #violisko

     自室での作業明け。時計をチラリと見て外を見れば当然ながらとっくに日が登りきっていて、急ぎの仕事をなんとかデッドラインまでに納められた事に安堵するとどっと眠気が襲い来る。このまま即ベッドにダイブして惰眠を貪りたいのは山々だが、担当者からのOKの返事がない事には安心しきれない。
     手持ち無沙汰でしかない待ち時間にせめて身体だけでもすっきりさせるか、と椅子から立ち上がり、同じ体勢で座り続けて凝り固まった身体を解そうと伸びをすると、肩やら腰やらがパキッと良い音を立てる。それだけで幾分かすっきりした心地になり、とっくに空になっていたマグカップを手に自室を離れキッチンへと向かうと思わぬ先客の姿が目に飛び込んで来た。
    「…何で浮奇がいるの?」
     ぱたん、と閉められた冷蔵庫のドアの影から姿を現したのは、隣に住む浮奇・ヴィオレタ。言うなれば幼なじみというやつで、家族ぐるみで交流があるとはいえ、家人が誰も居ないキッチンスペースに彼が1人で立っているのには少し驚いてしまう。
    「なに、今起きた……訳じゃなさそうだね。顔死んでるもん」
    「うるさいな。…で、何してるのって」
    「サニーのママが期限が近い卵を消費したいけど何作ればいいのって言うから。今から色々作って、スイーツパーティーするの」
    「……母さんは?」
    「フルーツ買いに行ってくれてる」
     うちの母親は浮奇を娘とでも勘違いしてるんじゃないだろうか。もちろん血の繋がりはないし、そもそも彼は男だ。でも美容にもファッションにも料理にも詳しい浮奇はうちの母親とよくそんな話をしては頻繁に一緒に出かけているから、可愛げのない息子より可愛がるのも当然といえば当然で。逆に浮奇の母親は「うちもこんな格好良くて逞しい息子が欲しかった」なんて俺の方を褒めて可愛がってくれるから、隣の芝は青い、というやつかもしれない。
    「カップもう使わないなら洗っていってね」
    「ほんとうるさい。母親かよ」
     本当はシンクの中に置き去りにしてシャワーに行こうと思っていたけど、そんな目論見もお見通しだと言わんばかりに釘をさされてしまえば従うしかなく、小さな声で悪態をつきながらもスポンジを手に取り底に乾いたコーヒーを擦り落とすとまるでお手伝いをした子供を褒めるように頭を撫でられる。泡だらけの手で同じことをしてやろうかと思ったけど、その前に離れていってしまって仕返しの機会を失ったことを残念に思いながら洗い流したカップを水切りカゴに置き、濡れた手を振って水気を払いながら何気なく後ろを振り返れば、高いところに仕舞い込まれた測りを取ろうと背伸びをして奮闘する浮奇の姿が目に飛び込んできた。
     我が家でお菓子作りをする人間なんて1人もおらず、更に言えば日々の料理にグラム数を測って調理するような細かい人間もいない。それ故に我が家で測りが活躍するのは今みたいに浮奇が我が家でお菓子作りをするときだけで、それ以外は滅多に使わないものをまとめて押し込んでいる棚の一番上に追いやられている。それを取ろうと踵を浮かせ目一杯腕を伸ばしている所為で、やけに丈の短いシャツが吊り上がってしまい、ぴったりとした黒のインナーがあらわになっていることに気づくと、自然と視線がそこに向いてしまった。
     俺よりも小柄で華奢とはいえ、浮奇の身体が女性的かと問われれば答えは「No」だ。肩幅だってそれなりにあるし、長い手足も細くはあるけれど、男のものであることは明らか。ただ、ヨガやらポールダンスやら、インナーマッスルを鍛えるような習い事を色々やっているからか、腰回りはかなり薄っぺらくて細い。しかもオーバーサイズのトップスと身体のラインを拾うインナーの所為でそれがさらに強調されていて、「サニー。お願い、」という浮奇の声を合図にしたように無意識に、本当に無意識に、その腰に手を伸ばしてしまっていた。
    「ぅわ…!」
    俺に思い切り両手で腰回りを掴まれた所為で上がる驚きの声にハッとすると、僅かに身を屈め、少し勢いをつけるようにして膂力で浮奇の身体を持ち上げる。予告なしの突然のリフトに驚きながらもバランスを崩さないのは流石だと思う。
    「ほら、早く目的のもの取って」
    「は?いや、サニーが取ってくれればそれで良かったんだけど…ありがと。下ろしていいよ」
    測りと、さらにその奥に押し込まれたシフォンケーキ用の型を抱えた浮奇をそっと下ろし、手を離す。なぜか少し名残惜しさを感じたのは気のせいだと思いたい。引き下ろされたシャツに覆われて見えなくなってしまった腰回りから視線を外し、今度こそシャワーに向かおうとすると道具をおいて両手を空にした浮奇に引いたばかりの手を取られてしまった。
    「ねぇ、サニー今のもう一回やって」
    「えー…やだよ。疲れるし、理由がない」
    「理由なんて俺がして欲しいって言ってるだけで十分じゃん。ね、お願い。もう一回でいいから」
     捕まった手が、今度は俺の意思とは関係なく強制的に再び浮奇の腰に置かれる。はやくはやく、と急かす言葉にあからさまに溜息をつき、わざと強い力で遠慮なく腰を掴むと気合を入れて先ほどより高く身体を持ち上げ、両肩に手を置いた浮奇の腰骨を掌底に乗せるようにして支えれば真上から見下ろされる。俺をまっすぐ見つめるその瞳も見慣れているはずなのに、角度が変わるだけでこんなにも違って見えるなんて新しい発見があったことに嬉しくなって、そのままくるりと回ったタイミングで帰ってきた母親になぜか俺だけ「キッチンで遊ばないの!」なんて怒られた。俺は悪くないのに。
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    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
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    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
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    setsuen98

    MOURNING🦁👟みたいな何か。付き合ってません。
     ほぼ満席状態の店内。二人掛けのテーブルにルカと向かい合って座ってから、なんとも言えない無言の時間が過ぎていく。と言っても実際には大した時間は経っていないけど、黙り込んだまま相手が口火を切るのをただ待つ時間は何倍にも長く感じられる。だからと言って、いつもの快活とした姿とは異なり神妙な顔でテーブルを見つめるルカに「話って何?」なんて無遠慮に本題へ切り込むことなんて出来なくて、手持ち無沙汰にカップに口をつけブラックコーヒーをちびちびと啜るしか出来ず、日差しが降り注ぐ外をいい天気だなぁ…なんて現実逃避まがいに眺めていた。
     「シュウに相談したいことがある」と改まって連絡がきた時は、一体何事かと身構えてしまった。まさかルカの身に何か深刻な問題でも起きているのかと心配になり即座に了承の返信を打てば、カフェでお茶でもしながら聞いて欲しいとの思いのほかゆったりとした回答に、勝手な杞憂だったのかと胸を撫で下ろしたのが数日前のこと。ただ実際に顔を合わせてみるとこんな風に一切読めない様子で、大きな問題でないことを願う最中、突然ルカが顔を上げ僕の方を見つめたかと思えば、また直ぐに視線を落とし何度か口をモゴモゴとさせてようやく口を開いた。
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