雨の降る夜 乙女の指輪をジョセフへ渡し無事に儀式を終えた日から、アレインは仕事を済ました夜に彼がいる天幕に向かう許可をもらった。別にこれといって何か特別なことをするわけではなく、解放軍とは関係ない日常の話をしたり、話題がなくとも二人で穏やかな時間を共に過ごしたりと些細な内容だ。最初はジョセフがアレインの天幕に行くと言ったが、夜に会いたいと自分が提案したのに来させるなんて申し訳ないだの、俺が行きたいだけだから気にしなくていいだの、恥も外聞もなく駄々をこねにこねてなんとか彼の天幕に入る権利をもぎ取ったのだった。
とはいえ、解放軍の総督と参謀というどちらも忙しい立場であるため毎日とはいかず、自身の天幕に引き返して眠るまでの僅かな時間だけだ。それでも、ずっと心の奥底にしまいながらも夢に見ていた、父子として穏やかに語り合う時間ができたのが、なにより彼がそれを許してくれたのが嬉しかった。
3192