意訳「急げ、一番!」
夜道を先導するナンバが振り向いて言う。今日の夜、遅れて帰宅した一番を見るなり「用事がある」と言い出し、最寄りのコンビニへと連れ出されたのが先ほどのことだ。駆けていくナンバを大股で追いかけながら、朝焼け橋を渡りきる。
早々とばててしまったのか、ナンバは橋のたもとで少し止まった。息を整えているあいまに追いつき隣に並ぶ。すると川の上を通った夜風が強く吹きつけてきた。二月になっても寒さは厳しい。一番はポケットに手を入れながら聞いた。
「なんなんだよ、用事って」
「……終わっちまうんだ」
「終わるって何が」
「肉まんの季節がだよ」
一番が疑問符を浮かべる前にナンバはまた進みだす。今度はダッシュではなく早歩きだった。二人揃ってコンビニまでの道筋をいそいそと歩く。
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