煉瓦通りの異人達アーシェングロット&リーチ商会出張所にて
その店は異人達が多く住む海辺の街にいつの間にか存在していた。
一時期良くあった表側が洋式、裏側に回ると和風の折衷型のその店の中で、その辺りでも有名な異人の男がせっせと働いていた。
開国してから既にそれなりの時間が経ってはいるものの、情勢は相変わらず流動的で、異国からの来訪者にとってはまだこの国は危険とも言えた。
「……失礼します。アズール」
「ああ、戻ったんですねジェイド」
書類から目を離さずに、アズールは答えた。この国では殆ど見かけない長身の男は、はい、と微笑んだ。
「どこまで行ってきたのかは知りませんか……。まあ良いですよ。成果はありましたか」
「ええ、それはもう。品川辺りでも結構な当たりを引きまして。それに変わった模様の朝顔の鉢を譲り受ける事も決めましたし、あとは」
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