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    みやこ

    @nevergivedog

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    みやこ

    DONE幸真
    きっといつか重たい雲の間から光がさすから。

    にわか雨に降られた2人が駅で雨宿りしています。
    いつか光がさすように 真田が怒鳴っていた。なにか言っているのはわかるのに、はっきりと聞き取ることができない。
    「聞こえないよ!」
     俺も負けじと声を張ったが、それも伝わったのかどうか。
     夕立は勢いを増すばかりで、バラバラと大きな雨粒が容赦なくアスファルトに叩きつけ跳ね返る。会話をしようとするとどうしても叫ばなければならなかった。意思の疎通が成功しているとはとても言えないけど。
     開けた海岸沿いの遊歩道に、雨宿りできそうな建物や葉の茂った樹木は見当たらず、ただひたすらにバシャバシャと水を蹴散らして駅へと走っていた。
     道を渡れば目的地はすぐそこなのに、ちょうど赤に変わった信号に足止めされ、こんなときに限って車は絶え間なくやってくる。点字ブロックのくすんだ黄色をじっと見つめていたら、雨をかいくぐっていらいらとした舌打ちがちっ、と耳に飛び込んできた。そっと真田をうかがう。真田はそうすれば信号が赤から青へと変わると信じているみたいに睨みをきかせている。責められているような気がするのは実際すまないと思っているからだろうか。
    2419

    みやこ

    DONEデートでネモフィラを見に行く高1の幸村と真田です。
    タイトルは、〜の手中とか〜の思いのままみたいな意味です。手も繋いでるし。
    友達とネモフィラ見に行って幸真ならこういうやりとりするかな!?って盛り上がった話をもとに書きました。
    イン・ユア・ハンズ 木漏れ日が降り注ぐ遊歩道を行く幸村の足取りはすいすいと水面を泳ぐ魚のようで、どことなく常よりもうきうきとはずむように思われた。後ろ手を組みながら鼻歌を口ずさんでいる。幾重にも重なった木の葉の間を透かした陽が幸村の白いうなじを焼く。踏み出すごとに髪が軽く揺れている。
     ナントカという花を見に行きたいのだと幸村は言った。いつでも咲いているわけではないのだ、と熱弁を振るわれ、毎月恒例のデートは電車をいくつも乗り継いで公園へと赴くこととなった。
     去年の冬に付き合い始めてから五回目のデートになる。最低でも月に一度、二人きりでテニス以外のことをしようと取り決めを交わしたのだ。それぞれが案を持ち寄り、これまで遊園地で観覧車に乗ったり、上野の美術館で印象派の絵画を眺めたり、江戸時代の風俗を学びに博物館へ行ったりもした。どちらの意見を採用するかは勝負で決めている。ジャンケン、腕相撲、コイントス……。テニスはきりがない。もう一試合と何かと理由をつけて延長してしまうから。
    2007

    みやこ

    DOODLE栞作りがマイブームの妹に「これ真田くんにあげてね」と栞をたくされた幸村くん、真田が自分の育てた花を手元に置いてくれたら嬉しいな……と思って栞の裏面に花を押す(作者である妹にはちゃんと許可とった)。それを素知らぬ顔で「妹から」と手渡すと、幸村くんの予想に反して真田はすぐ花に気づいてくれて、それが嬉しくてどきどきしちゃうんだ、可愛いね〜。
    というのを説明できなくて書きました。
    ビオラ・スミレ科スミレ属「最近、妹が栞をつくるのにハマってて、弦一郎くんにも……って」
     きらめくシールと色鉛筆のイラストで彩られた紙片を幸村から差し出され、ややひるむ。可愛いが、可愛すぎる。リボンが黒なのは幸いだった。
     受け取って、なんとはなしに裏返してみるとそちらは無地で、ただ端の方にひそやかに花が押されていた。水ににじんだ絵の具のようにじんわりした淡い黄色と薄紫の花びらに見覚えがある。
    「お前の花だな」
     驚いたように幸村がぱちぱちと瞬きをし、それにあわせて長いまつ毛が揺れた。
    「知ってたの」
    「名前までは知らん。だがお前の庭で見た」
    「そっか」
     噛みしめるように幸村は言って、それからにこりと笑った。
    「ビオラ。ビオラだよ!」
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