いちゃいちゃ ワールドカップも終わり日本に帰国してからというもの、真田はよく烏龍茶を飲むようになった。部活帰りに水筒が空になってしまったときなど「わざわざ外で水を買うのはしゃくなのだ」と緑茶を選んでいたあの真田が。しかも選ぶのは決まって割高の黒烏龍茶なのだ。
よく冷えたジャスミン茶のペットボトルを手に取りながら、もしやと考える。
「ねえ、それってもしかしてお前の黒龍にかけてるのかい?」
「よく気がついたな!」
「間にカラスが入っているよ」
「うむ。だがまあ、黒龍には変わらん。自分の編み出した技に愛着がわくのは当然だろう」
そうかな。俺はべつに街で見かける鏡という鏡に親近感を持ったりはしないけど。
それよりも、ちょっとだけつまらない気持ちになっていた俺はすっかり油断している様子の真田の脇腹をつついた。
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