大義名分 グッズ売り場の一角、キーホルダーが並ぶ棚を前にして、庵は小さくうなり続けていた。
「記念……!」
打撃成績で記録を打ち立てた選手の写真をあしらった、限定デザインのキーホルダーだ。
「そんなに迷うくらいなら二個買っちゃえば」
保存用と使う用でさと、横でそれを見ている五条が言った。二人はもう三十分はここにいる。その間にも、五条たちに断りを入れて手を伸ばし件のキーホルダーをレジへ持っていった客は、両手指どころでない数だった。
彼らにはほとんど迷うそぶりがなかった。ファングッズの購入に必要なのはああいう勢いなのではないのかと、五条は思う。
「キーホルダーっていう日常グッズだからこそ、普段使いしたい気がする。でも今使ってるキーホルダーも、つけかえたばっかりだから」
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