掴むことのできない匂いこの人とは絶対に分かり合えないと思ってた。
「鬼よりも人間が嫌いだ」とか、「人間よりも鬼の方が可愛げがある」とか…人間嫌いっていうのは人伝に聞いてはいたけど、それは俺の想像以上だった。だったらどうして鬼殺隊に入ったんですかと聞けば、ニヤニヤした不快な笑みを浮かべて「金の為に決まってんだろ」と……。それは紛れもなく本心だった。悪びれのないこの人の本心。
この人にとって命って何なんだろ。この人にとって命はそんなに軽いものなのか。俺は初めて人に対して嫌悪感を持った。きっと歪んだ顔で見つめてたんだと思う。
「良い顔するなぁぁ。そうそう。そうやって人間の醜い部分見てこれからは生きていきなぁぁ。人間なんざ醜悪の塊なんだからよぉぉ」
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