悪い夢 目が覚めると、隣から声が聞こえてきた。小さく鼻を鳴らしながら息を吸う、特徴的な呼吸である。何度か鼻をすすると、今度は圧し殺したような嗚咽が聞こえてくた。それが泣き声であることは、考えなくても分かってしまう。
最近は、いつもこうだった。僕の家を訪れた時、彼は必ず涙を流すのだ。それも、僕の起きている間ではなく、眠ってからを見計らって泣いている。とはいえ、僕が物音で目を覚ますことくらい、彼にも分かっているはずだろう。それでも隠そうとするのは、弱みを見せることに抵抗があるからだ。
僕は、静かに寝返りを打った。音を立てないように気を付けても、布団はがさごそと衣擦れの音を響かせる。隣に眠る少年は、顔を布団の中に隠すように身体を丸めていた。その小さな身体に手を伸ばすと、抱え込むように抱き締める。
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