夜桜 外に出ると、暖かい空気が身体を包み込んだ。日差しは燦々と地面を照らし、真っ黒なアスファルトを暖めている。背中から噴き出す汗の感覚で、自分が服選びを失敗したと悟った。
それもそのはずだ。既に、カレンダーは四月へと移っていたのだから。町を行く人々はコートを脱ぎ、歩道には桜並木が並んでいる。忙しくしているうちに、世間はすっかり春の光景になっていた。
そうなると、テレビはこぞって桜の特集を組む。夕方のニュース番組やゴールデンタイムのバラエティは、我先にとお花見スポットの取材をしていた。日本人はお花見に命をかけているから、朝早くから現地に向かって場所取りをする。そんな浮かれた人々を見つけ出しては、各局がインタビューを収録するのだ。昼間から酒を飲む観光客の姿を見て、ルチアーノは呆れに目を細めていた。
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