長編 1章 目を覚ましたとき、自分がどこにいるのか分からなかった。ゆっくりと身体を起こして、周囲の光景を確かめる。視界に入る壁紙のデザインは、僕の部屋のものと全く同じだ。並べられた家具も壁に貼られたポスターも、僕の部屋と全く同じだった。
ベッドから降りようとして、急に視界が真っ暗になる。立っていられなくなって、慌ててその場に座り込んだ。割れるような頭痛に襲われ、思考が上手くまとまらない。自分の身に何が起きたのかさえ、今の僕には分からなかった。
頭の片隅を、恐ろしい記憶が流れていく。落下する要塞の中で、ルチアーノと手を繋いでいる光景だ。足元を揺らす震動も、心を支配する恐怖も、はっきりと思い出せる。繋いだ手の温もりさえも残っていて、それが悪い夢だったなんて、簡単には思えそうもなかった。
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