グレムル前提のヒスムル(仮)29話ある日、ヒースクリフがムルソーに頼まれた書類を総務室へ持って行った時の事だった。
総務室中に玄関のチャイムの音が響き渡った。
ヒースクリフには聞き馴染みの無い物だが、この工房では発注した部品が宅配便で届けられる事が時折あった。
『ヂェーヴィチ協会の者です。荷物を届けに来ました。』
インターホンからその声が聞こえると、ムルソーの書類を受け取ったロージャがボタンを押して配達員に中に入るように言った。
「俺が出ようか?これから下行く所だし。」
「あ、ちょっと待ってヒース!私が出るから!」
「え?ああ……」
バタバタと駆け寄ったロージャが階段に面した扉を開くと、そこには翠色のコートを着込んだ少年が立っていた。
(こいつがヂェーヴィチ協会のフィクサーか……)
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