夕刻と、彼と、バクラヴァと 今日は目が痛くなるほどに晴れていた。国王に報告を済ませて出た廊下の窓が、私の服とよく似た水色で埋め尽くされていた。アラビアンコーストの快晴はいつもあんな風だ。まるで自分が空色に溶けて消えるような錯覚を幾度と感じている。涼やかな青色の中に混じるからりとした酷暑と輝かしさが、私には肌に合っているらしい。廊下を通り抜ける風が私を撫でていた。
それにしても、昼夜の寒暖差が大きいせいか、すっかり肌寒くなってきている。そう遠からず、羽織るものが欲しくなる時間が来るのだろう。近寄るダークパープルの帳を横目に、一度王宮を出た。小腹が空いたのだ。とりわけ、甘いものが良い。バクラヴァでも買ってこようかと市場を覗くこととした。
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