行先 いくつか電車を乗り継いだ。そして最後の電車を降り、駅から出ると僕は朝尊に連れられて歩く。朝尊は僕の右の手首あたりを掴んで迷いなく進んでいた。昼間だが、駅前にあまり人通りはない。次は一体何処に行こうというのだろう。
「タガノキ跡の鬼門にある社に用事があってね」
朝尊はそれだけ言った。タガノキ、聞きなじみのない音でピンとこなかったが、街の標識を見て僕は理解した。
「これをタガノキと読むんだね」
朝尊は小さくうなずく。その鬼門、北東の位置に何か建物があるということだろう。史跡を尻目に僕たちは歩いて進む。相変わらず、人々は朝尊を見ない。僕は気付いていなかったが、おそらく道行く人々は僕の姿も見ていない。町もとても大きいというわけでもなく、駅からは住宅街を通って進んだ。そして、細い私道のような道を進み、左に曲がると、その目的地はあった。朱塗りの鳥居、古びた社。聞いたことがあまりない神様を祀る神社。参道を通り、ほどなくして靴が多く奉納されている社にたどり着いた。
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