ぜったいにやらないはフラグ ガシャン、という耳障りな音にびくりと肩を震わせた。振り返るとロマニがマグカップを落として割っていた。しかも中身入りだ。コーヒーは床にぶちまけられ、白いスラックスにはコーヒー染みが広がっていて、靴にも掛かった形跡がある。
「寝ぼけ過ぎだろ」
「返す言葉もございません」
しょもしょもという擬音が相応しいほどに、彼はしょぼくれている。水気のあるものと割れたものの掃除というのは結構面倒だ。高杉はロマニに着替えてこいと言ってその場を離れさせた。手を切られても面倒だし、染みには早い段階で手を打った方がいいからだ。とぼとぼと歩いていくロマニの背に「ちゃんと洗えよ」と声を投げかける。聞こえたかどうかは分からない。
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