ぶち壊しハロウィン 出会い頭に言うべき言葉は決まっている。そういう行事だから。
「食べ物出してください」
「は?」
久々知先輩は非常に驚いているようだった。驚く意味がわからない。今日という日――つまりハロウィンという日にドアの前に恋人が現れたとして、やることは一つでは?
「ちょっと待ってろ」
「はい」
玄関先に取り残されて先輩がアパートの中に引っ込むのを孤独に眺めた。ドアを開けっ放しにしてるのも悪いから、追いかけようじゃないか。こんな夜中にドアを開けたまにしてたら虫が入ってくる。先輩の部屋に蛾とかカメムシとかが。それは結構どうでもいい問題だけど、僕は先輩の家におじゃましに来たのだから家におじゃまする以外の選択肢などない。
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