どうしよう、
もう、
逃げるしかない!
「だめ! 本当にだめ! こっち来ちゃだめ!」
「おや? 今日のクロエは追いかけっこの気分かい?」
「違う! き、来ちゃだめだって!」
「ふふっ、それじゃあ行くよ」
「わーっ! わーっ!」
自室の窓からベッドごと空へ飛び出した大騒ぎの俺。と、そんな俺を箒で追いかけるラスティカ。異様な光景のはずだけど、あらゆる異様な光景にすでに慣れてしまったこの魔法舎、かつ俺たちが西の魔法使いなせいもあってか、またなんかやってるね、と誰も気に留めない。
でも、でも、俺にとっては大問題だった。長い任務に行っていたはずのラスティカが、予定よりかなり早く帰ってきた。もちろん嬉しい。寂しかったし、会いたかった。でも今日は、今だけは本当にだめ。今の俺には、絶対にラスティカに知られたくない秘密があるんだから。
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