ハイネ少年はノックの音で目を醒ます。
覚醒したにもかかわらず、いまのは幻聴だとまっさきに思った。または、まだ夢の世界であるのかもしれない。そうでなければ困る。かりに人の立てた音であるなら、それの神経がまともであるわけがないのだから。
しかし続いて解錠の音があたりに鈍く響いた。廊下の照明光を背に連れた侵入者は堂々と部屋に入り込む。後ろ手で扉を締め、手探りになって進み、やがて人の布団を無情な手つきで引き剥がしてしまった。そして寝台のはじに腰をかけると、まだ寝台に沈んだままの相手の肩に手をかけ、その真っ黒い目を見開き暗闇に滲む白い顔をまじまじ見てから、心のそこから嬉しそうにわらって、「[[rb:Heureka > 見つけたっ]]!」
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