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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    狡宜コミュのWebラリーに置いていたものです。
    朝の二人。

    #PSYCHO-PASS

    日曜日のオムレツ 食事は基本的に狡噛が作る。三食全てとまではいかないが、一食、いや二食程度は彼が作る。俺はそれをぼんやりと食べて感想を言って、食器洗い機に皿を放り込む。その皿も狡噛が選んだもので、見たこともない色であったり、不思議な形をしていたりする。狡噛の飯はうまい。和食も洋食も中華も、山岳で食べられるスパイシーな料理も、彼は自分のものにしてしまっていた。俺が知っているのは料理の下手くそな狡噛慎也だったから最初は驚いた。狡噛は特に味覚がおかしいところがあったし、俺はそんな彼を愛してもいたので。
    「それで、今日は午後からどうする?」
     小さなオムレツをフォークで突きながら狡噛は言った。コップにはオレンジジュース、脇の小鉢には名前も知らない野菜のサラダ。俺はそれらを均等に口に入れながら、彼の提案をぼんやりと考えた。
    「出島のマーケットは? 古本屋を巡って、時間が経ったら夕食を食べにどこかの店に入ってもいい。俺はそろそろ観葉植物の肥料が切れて来たから、それを買いたいかな」
     オムレツを口に入れる。トマトの甘酸っぱいソースが口に入る。すると、狡噛が俺をじっと見た。何か奇妙なものを見るような目で。俺はその理由がよく分からずじっと見つめ返したが、彼はどうしてか俺に手のひらを差し出す。困惑して首をかしげると、彼は俺の唇を拭って、トマトソースを舐めた。俺はそれに恥いることはなかったが、彼がここまで自分の中に入ってきていることには驚いた。自分の生活の、少し恥ずかしいところまで。
    「このまま家でぼんやりするのもいいかもな?」
     狡噛が笑う。それは誘いなんだろう。俺はそれに気づいて、少し恥ずかしくなった。セックスの誘いがこんなに生活に密着しているなんて、少しどころじゃない、大いに恥ずかしい。けれどそれは甘くもあった。狡噛が側にいることに、俺は安堵していたから。
     俺は皿を片付ける。狡噛がコーヒーを淹れて煙草に火をつける。さぁどうしよう、日曜の午後の俺は大変だ。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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    TRAININGお母さんが亡くなった時、海に行った宜野座さんの話。思い出の全ては狡噛に支配されていて消えられない苦しさ。執監時代。
    800文字チャレンジ3日目。
    波打ち際(サマータイム) 恋人と行きたいデートスポットは? もちろん海です、夏の海はロマンチックだもの。俺はそんな若い女の感想を耳にしながら、やがて海を模したプールの宣伝に変わってゆくコマーシャルを一つ無人タクシーの中で見た。途中でナイアガラの滝が出てきた時は笑ってしまったが(あれは川だ)高濃度汚染水で満たされていると分かっていても、彼女らにとっては海は憧れの場所なのだろう。
     狡噛が読んでいた本にも海を賛美するものは多かった。詮索はしなかったけれど、事実彼は泳げもしない海を眺めに行っているようだった。誰かに影響されやすい、可愛らしい恋人。
     俺は今、母の遺体を引き取りに沖縄に来ていた。そして何かに導かれるように、全てを終わらせると海に行った。多分、学生時代に俺の母の出身が沖縄と聞いた狡噛が、きっと色なんて全然違うんだろうなななんて、そんな馬鹿げたことを言ったからだった。その頃は俺は監視官で狡噛は執行官だったから、俺は意固地になって言わなかったが、彼の言葉はいつだって俺の中にあった。
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