チャンス『水篠さん、落ち着いて聞いてください。弟の旬さんがダンジョンで……』
監視課の犬飼さんからもらった電話を最後まで聞かないまま、俺は通い慣れた病院に向けて駆け出した。
弟はS級のハンターだ。滅多なことでは怪我などしない。今回潜ったらしいダンジョンもさほどランクが高いところとは言っていなかった。それなのに一体なぜ…?
受付で聞いた病室に着くとベッドに横たわる弟を見つけた。慌てて駆け寄ると側に立っていた犬飼に動きを止められる。
「っ、旬…!」
「水篠さん、今旬さんは寝ていらっしゃいます。もう少し様子見が必要だそうです。」
「…そう、ですか。すみません取り乱して……」
旬に外傷らしいものは見当たらなかったが顔色が悪い。静かに寝ている姿が以前の母と重なり心臓が嫌な音を立てる。
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