Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    tang_brmy

    PAST⚠️パソスト公開前に書いたので公式の設定と齟齬があります

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25044306 の続きのふたりのおはなしというか、起承転結の起に当たるはなし。
    なので、衣都ちゃんが出て来ない吏衣都です。出て来るのは吏来さんとミカさんだけ。
    「その日」に思いを巡らす吏来さんを捏造しました。
    on that day「あら、吏来。いらっしゃい」
    「お疲れ」
     勝手知ったる何とやら。ジム帰りにAporiaに寄った吏来は、案内されるより先にカウンターの隅の席に腰を下ろす。
    「いつもの?」
    「うん、お願い」
     おしぼりを手渡しながらオーダーを確認したミカが、何かにあてられたように目を細めた。
    「機嫌がよさそうね」
    「わかる?」
    「それはもう。詳しく教えて……と言いたいところだけど、聞くまでもなくお嬢のことなんでしょ」
     首を横に振って肩をすくめるミカに、吏来は口の端を上げて答えとする。
    (お嬢のこと貰う約束した――とは、流石に言えないよな)
     たとえ親友と言えど、衣都を良く知る相手に詳しい話をするつもりはない。ただ、彼女とうまく行っているのが伝わればいいと、曖昧に濁す。ミカもその辺りの機微には聡いので、それ以上は何も聞かずに笑って、吏来の酒を作り始めた。
    3692

    nana0123co

    PAST過去本の再録
    pixivにもある「ルークが剣になってかえってきた話」はこの前の話ですが、話を書いた順番はこっちが先です。中身はED後ルークが剣になって帰ってきた話(そのまま)です
    この時系列っぽいxxx年後の話が「音の記憶」(pixiv再録済み)です
    音の記録 はるか昔に記された預言のとおり、聖なる焔の光はこのオールドラントに生れ落ちた。
    預言に記された聖なる焔の光は一人、けれどもう一人の聖なる焔の光が人の手よってこの世に現れたのは預言にも記されていないことだった。二人の聖なる焔の光は同じ時間を生き、そして二人が最後にたどり着いた場所で、その同位体でもあるローレライが音譜帯へと駆け上るその中で二人はオールドラントから姿を消した。
     けれど。
     契約の歌に導かれるようにして再び地上に現れたのはたった一人の姿だった。
    「それがさ、あるべき姿だったって思わねぇ? だってもともと預言に詠まれていたのはアッシュだし、普通に考えるならどれだけアッシュのレプリカを作ってもそれはアッシュ自身にはならないんだし、だとすれば、もともとこの世に「聖なる焔の光」ってのはアッシュただ一人ってことじゃん。途中でルークを二人にするからややこしくなるんだよ。もともとルークは一人。一にゼロ足したってひいたって一。一人なんだよ。だから、あの夜何かよく分からない間に生還してたのはアッシュ、お前でいいんだって」
    69778

    nana0123co

    PAST過去本から
    家出するルークと当たり前のように追いかけるアッシュの話
    (2011年8月)
    沈黙の破片 それはもうだいぶ前からルークの中にあった。
     こんな思いを抱いているなんて、誰にも気が付かれてはいけなかった。心の奥底にそっとしまって鍵を掛けて、誰にも、唯一ルークの心の中にまで足を踏み込むことの出来るアッシュであってもそれを見ることが出来ないように。
    「ごめん」
     小さく呟いたその先には誰もいなかった。
     ふわりと風に揺れた髪の間から緑の瞳がかすかに揺れる。そっと伏せられたそれが再び開いたその時には先ほどの陰りはどこにもなく、意思を持って歩き始めたその足取りはいつもと変わらぬルークのそれだった。
     はずだった。


     ルークがいなくなった。その知らせがバチカルへ届いたのはその日の夜のことだった。


     定期船の着く時間帯はその船から乗り降りする客ばかりでなく、その客を狙った辻馬車や行商人が港に現れていっそう騒がしくなるのはいつもの光景だった。船の上の揺れる足元から開放されたルークは、潮風の混じる外の空気を思いっきり吸い込むと、体をほぐすように大きく伸びをした。船は嫌いではないが、その性質上長時間波に揺られている上、定期船では個室などないから寝てやり過ごすという手段が取りにくいから普段より疲れた気分になる。それに、普段ならば他の乗客とたわいもない話をして気分を紛らわせれるが、今回は事情があってそれも出来ず、ちょっとだけ今の状況を悔やんだりした。
    30042