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    棺(ひつぎ)

    PAST原作者及び公式関係者、様々な媒体での自作を宣伝の為の書き込みやURLを貼り付ける行為は行っておりません。

    #+チ動説認定記念日
    に参加させて頂きました
    ラファウ編
    チ動説認定記念日/ラファウ編#チ動説認定記念日/ラファウ編

    これから死というものが訪れようとしているのに僕の心は恐怖を感じていないのが不思議だ。脳は正常に働いている。
    思考停止はまだ。
    まだ思考停止してはいない。まだまだ。
    芥子の実を使うのは我ながら上出来と言えよう。アレを伝えたら自分が毒を盛られたと思い込むのは自衛思考が働いている証拠だ。それにしても大の大人でも死が目の前にチラつくと狼狽えるんだな。炎に焼かれた人は苦しむ様子も見せず、ただただ眼球を僕の方に向けていただけだと言うのに。いや、もう動かせる筋肉や骨は神経を焼かれて動かせなかっただけかもしれない。もしかしたら僕が見かける前には呻き声を発していた可能性だってある。死というものを本気で考えた事はなかったかもしれない。天国へ行けるように日々の行いを良いものとする。罪を犯してはならない。ましてや禁忌と言われる類など以ての外。数日前までは心の底からそう思っていた。恵まれた環境下でいかに己の才を発揮し社会(世界)に貢献するか。許された範囲内での天文学ならば咎められないで暮らせる。そんなフリをしながら異端者並の罪を秘密裏に行えたならさぞ良かっただろう。そう、僕はまだ子どもで広い世界など知れた事でしかない。成長して思慮深く大人しく過ごしていれば、こうして死と向き合うなど起こらなかったかもしれない。そもそも神学に進む道はどうした?彼(か)の人に出会わなければ迷わずに神学だった筈だ。天文の知識もそこそこに培っていれば、例え天文を学べなくても知識は死ぬ事はないのだ。
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    棺(ひつぎ)

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    ポトツキとラファウ/アストロラーベの窓アストロラーベの窓

    孤児だった頃は空を見上げても単なる星と月の認識しかなかった。何も言わない光が妬ましかった。僕がこんなにも寂しくしているのに、この星々はただ輝くだけで手を差し伸べてくれない。何故、両親をこの世から奪ったのだろう?神様は何故、僕から両親を奪ったのだろう?神様は優しい存在ではないのだろうか?疫病だなんて嘘だ。神様がいるならばそんな怖い病も消し去ってくれるのではないのだろうか?幼い僕の感情は悲しみに溢れていた。けれど、あの人に拾われてから世界が天と地の差で変わった。

    「ようこそ。今日からこの部屋が君の世界の一つだ。ラファウ」
    「ここが?」
    その日の夜に突然、僕の周囲が一変した。知らない人、知らない場所。孤児は里親に育てられる事があるらしいと言うのは施設長から聞いていたが、僕がその候補にあがるとは思っていなかった。正直、喜びと不安が天秤にかけられていてその重力は左か右か。出来れば前者が良い。里親の場所に移っても虐げられてしまったなら良好な生活とは言えない。しかし里親となるには厳しい審査の元、経済もしっかりしていないと子どもを育てられない。まぁ、引き取って稼ぎ頭にする家庭もあるのだとか。肉体労働は嫌だな。体力は人並み以下だし。
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    棺(ひつぎ)

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    新年二発目
    禁断のアンノヴァが続いてしまいました
    「蕾」の続編ではありませんので単体で読めます
    ノヴァクさんが身体を貫かれる行為はありませんが、雰囲気的にセンシティブなので、一応R-18にしております

    アントニさんが酷い男です

    BGM
    Castrato
    アンノヴァ/CastratoCastrato
    さぁ
    最後の警告だ
    私の声を聞け
    二度も言わぬ
    選択肢は肯定
    ただそれだけ

    「一体、貴方はC教をどこまで穢すおつもりで?」
    「な、何の事でしょうか…?」
    シモンとレフはアントニに指示された通りにヨレンタを拷問室から出して牢獄室へと移動させた。愛する愛娘をアントニの手にかかる前に安全な場所へ避難させようとした矢先に都合よくシモン達を引き連れての登場とはよく出来た展開だとノヴァクは思った。
    「とぼけても無駄ですよ?異端者二人と行動を共にしていたという事実は否定出来ない真実だ。現に六日前も食事をしていたというではないか。しかも…」
    アントニはノヴァクの耳元で「とても親しげに」と囁かれて背筋が凍った。愛娘が天文に興味を示した事は幼少の頃から知っていた。敢えてそれを遠ざけずに支えながら、分からない程度で遠ざける様に助言をしていたつもりだ。ある場所で働きたいという申し出にも否定しなかった。妻が死んだ後の身内は俺だけだからだ。俺の全ての言動を信じなくても良い、最低限の女性としても振る舞いを守ってくれれば。勤勉なのは妻とそっくりだから、冷たい手を僅かでも温かくなるように手袋を買ってやった。子どもの成長は著しく早い。洋服と同じで手袋もすぐに新しいものに変えなくてはならなくなって、大きくなるのが嬉しくて堪らなかった。このまま安全な場所で仕事をこなして、いつか結婚するのだろう、子どもを産んで夫となる人物と恙無(つつがな)く暮らしてほしい。それだけが愛娘に対する希望。なのに、どうした?これは。
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