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    2BH

    MOURNINGレグリ初書きのもの。🟥が🏔️を降りて1年くらい経った頃の話。ナチュラルに半同棲のようなことをしています。
    外の風が、少しだけ涼しくなってきた。窓を開けておいたせいで、薄いカーテンがふわりと膨らみまた静かに元に戻る。その柔らかな揺れが、今日のアパートで聞こえる数少ない「動き」だった。テレビもつけていないし、音楽も流れていない。キッチンの蛇口はきちんと閉まっていて、時計の針はどこかの誰かの鼓動みたいに淡々と回っている。
    グリーンはソファの端に浅く腰かけて、手元の資料をぼんやりと眺めていた。視線だけは文字を追っているが、内容なんてひとつも入ってきちゃいない。暇潰し、手慰めのようなものだ。
    ちら、と斜めの位置に目を向ければ、ピカチュウを撫でるレッドが視界に入る。粗雑に物事を片付けるようでいて、その手付きが存外優しい事をオレは知っていた。どうせポケモンの事しか考えていないだろう男だが、その存在感はいつだって言葉にならない。静かで、重たくなくて、けれど確かにそこに在る。……変わってねえな、と思う。昔も今も、余計なことは言わないし、聞いてもこない。マサラにいたとき――旅に出る前から、そういうところは変わっていなかった。なぜか、自分の言葉はレッドの前では特別よくこぼれる。
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