紅千（紅視点）　黒縁眼鏡と毛さきが跳ねた鳶色の髪。青いネクタイはまだなんとなく見慣れない。
　歩きながら守沢が遠慮ぎみな視線を寄越してくる。
　下校中、駅へいく道でのことだった。
「駄々をこねてすまん」
「かまわねぇがよ。いっしょに帰りたいなんてどうしたんだ」
　学年があがってクラスは離れた。タメで唯一気兼ねなくやりとりできる奴だけど、仲よしこよしのあいだ柄じゃない。わざわざ教室へ迎えにきて誘われたため、こっ恥ずかしくもあった。
「じつはな、鬼龍く……鬼龍」
　言いなおした守沢は照れたふうに頬をゆるめている。男にしちゃかわいいツラだと、こういう瞬間に思ったりする。
　一年生の夏、俺がひどい態度をとっちまったにもかかわらず、しゃべるときの守沢はいつも笑顔だ。今までの知り合いにはいないタイプっつぅか、そもそも声をかけてくる同級生なんざいねぇし。

.「あ～～だる、ホルマジオそれ１本ちょうだい」
「別にいいけどよ、お前やめたんじゃねえのかよ」
「ちょっとだけ……今日メローネいないし……」

ってタバコもらって一服してたら、急用でアジトに来たメローネに声かけられる。

「あれ、ありす？　今日いないんじゃ……」
「メローネ！？　えっなんで……えっ！」
「あっち！　オイお前俺の腕で」
「なんでもないのなんでも！　ホルマジオとお話しててそれで」
「……ふうん？　この前の仕事の話なんだけどちょっといいかい？」
「うんうん！　なあに、中入ろう」

メローネに見つかった瞬間ホルマジオの腕でタバコ消して押し付けて取り繕ってメローネに笑うありちゃんをみたホルマジオは「ふざけんなよ」とも思うけど、まああのありすがあんな顔して誤魔化して近づいてんだから本気なんだなあ……と思うなどしてほしい